第六話 嘘の始まり 終わりの真実

ブラン・アルブ


 昔あるところにブラン・アルブという少年がいました。




 少年には父と母がいました。




 しかし、そこに愛情はありませんでした。




 夢魔であるその一家は家族という営みには興味がありませんでした。




 自らの欲を満たすだけが生きる喜びであり、子を成すのは子孫繫栄の手段でしかありませんでした。




 夢魔の子というのは、生まれた瞬間から孤独であり、力のある者だけが生き残ることが出来ます。




 ブランは力がありませんでした。それと同時に夢魔が求めることのない愛情を強く求めていました。






 その欲求は虚しくもブランの両親には理解されませんでした。




 その欲求は異端の忌子として夢魔族から追放されました。






 愛を知りたかったブラン。




 書物には性交が愛の証だと記されていました。




 多種多様な種族と交わるも、快楽だけが残り愛情はありませんでした。




 愛を残すにはどうすればいいのか考えました。




 そうだ、愛が逃げないように鍵をかけてしまえばいいんだ。






 その欲求は力の無いブランに力を与えました。




 その欲求は力を鍵へと変えました。






 それでもブラン心は、欲求は、満たされることはありませんでした。






 それでも愛を追い求めます。




 幾年か時が経ち、一冊の書物と宝玉に出会いました。




 その書物は王様と民のお話でした。




 王様は民に愛され、民は王に愛される。




 王という存在は、愛の象徴ではなかろうか?




 魔界には王様が居ません。王として君臨すれば、魔界に住む魔族全員から愛を得られるのではないだろうか?




 その時、宝玉が黄金に輝きだし、強い光を放って消えました。すると、ブランの左腕が激しく痛み、百合の紋章が刻まれました。




 目の前にはサファイアのような青髪の少女が立っていました。




 「あなたを守護すべく参上いたしました・・・です。“極光の月弓アルテミス”はあなたのものです」




 その後スミレと名乗った少女は、神界器デュ・レザムスについて語った。




 千年戦争終結の際、神を封じ込め魔界各地へ封印したこと。




 魔界の王はまだ生きていたこと。




 神界器デュ・レザムスを統べることで魔界の王の世継ぎとなれること。






 魔界の王。




 愛を知るチャンスが巡ってきたと高揚した。




 ブランはこのチャンスを逃すまいと、少女を鍵にかけました。




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