Honor the pellicule

一度巻いたオルゴールは、巻き戻しも一時停止もできずに鳴りやむまで発条を回し続ける。


拝啓、幾年か昔の私へ。


この声が届くでしょうか。


「新宿駅前の路上ライブに行ってみてください。」


この声が届いたとして、彼の路上ライブを目撃したとして。


当時の私はきっと足を止めないだろう。


「何だアイツ、クサいことばっか言って」と嘲笑するだろう。


そして、YouTubeで彼を見つけて過去の自分に後悔するのだろう。


一度でいいからこの目であなたを見てみたかった。


一度でいいからこの耳であなたの声を聴きたかった。


一度でいいから、あなたの言葉を感じたかった。


この人生というものはオルゴールのようなもので、巻き戻しも一時停止もできない。


ただ、オルゴールと違ってどんな音色でも奏でることができる。


拝啓、不可思議/wonderboy様。


あなたが待ち望んだ景色を見れなかった事を心からお悔やみ申し上げます。


しかし、あなたが亡くなってちょうど八年がたった今。


あなたが待っていた景色が広がっています。


ここまでの427文字をあなたに捧げます。


R.I.P.

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