盲目の方が生きやすい

 眼鏡を外して夜の閑散とした住宅街を歩く。


 ぼやけた視界に映るのは、家の窓や街頭の淡い光。


 時折走る車のヘッドライトがまるで彗星のように右から左へ流れ去っていった。


 それらの霞んだ光は忙殺しようと企む現実から守るように私を包み込むのだ。


 こっちの方がいいだろうと、朧げな白月がこっちを見てほくそ笑む。


 さらりとした夜風を感じながら、私は解けた靴紐を結んだ。

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