第2話希望的観測を立てた俺よ、すぐに彼女に謝れ
※今回は現婚約者のアレックス殿下視点でお送りします
春の日差しが暖かな午後のひととき
愛すべき俺の婚約者であるエルメラ嬢の為にと用意した温室で、その事件は起こった
「アレックス殿下、すぐに私との婚約を破棄をしてください」
今、彼女はなんと言った?
何だが聞こえてはいけない単語が聞こえた気がする
「エ、エルメラ嬢?今、とてつとなく聞きたくない言葉を耳にした気がするのだが……?」
「申し訳ありません、声が小さかったのでしょうか?アレックス殿下、すぐ私との婚約をはk「待て!待て!!待ってくれ!!繰り返さなくて良いから!!」」
聞こえない、聞いてない
……よし、まずは腰を落ち着けて話し合おうではないか俺よ
「エルメラ嬢よ?何か俺に不義でもあったのか?
確かに貴方の記憶が無いのを良いことに、アレックと呼ばせたり、弟が過去に送った手紙を燃やして抹消したり、婚約者同士は毎日寝る前にキスをすると教えこんだりしたが……」
「あぁ、やっぱりキスの話は嘘でしたか。今後は一切しない方針でいきますね」
「なんだと!?2人の愛を確かめ合う大切な習慣ではないか!!俺の兄上も妻の義姉上あねうえに、寝る前と朝起きた時は欠かさずしていると申していたぞ!!」
「次期陛下夫婦のイチャラブっぷりをこんなところで暴露されて聞きたくありませんでした。それによそはよそ、うちはうちです」
なんということだ
もう2度と健やかに眠るためにキスしてくれるエルメラ嬢の姿を拝むことが出来ないなんて
動揺して口を滑らせたばかりに、このような失態を犯すとは一生の不覚である
いや、待て俺よ
それよりも肝心の話の理由が聞けていないではないか
「して、愛しのエルメラ嬢よ。どうしてまた急にそんなおかしな事を言ったのだ?」
「いいえ、アレックス殿下。おかしな事ではありません。むしろ今までが間違っていたです」
「いやいや、何を言うのだ。俺はこれ程までエルメラ嬢を愛しているし、エルメラ嬢もまた俺を愛している。何も間違ってはいないだろう?」
「どうしてそう自信満々に、私のことまで知ったように言えるのでしょう。この何様、俺様、唯我独尊ゆいがどくそん王子様は」
「俺は真実を言ったに過ぎないからな!!それとも違うと申すか、エルメラ嬢よ?」
「……ノーコメントでお願いいたします」
うむ、照れくさそうなエルメラ嬢もまた可憐で愛らしいな
ではなくてだな
「俺達はこうも愛し合っているのに、何故そんな話が出てくるのだ?」
「アレックス殿下は今後、兄上であらせる次期陛下の補佐をするべく外交官になるのでしたよね?」
「そうだもと。国内も大事だが自由に動けぬ兄上の代わりに、俺が外交官として他の国々との橋渡しをする予定だ」
「私の元婚約者である元第3王子殿下も、外交官として未来は働く予定でしたよね?」
「確かに。爵位を取り上げた今はもう無理な話だが、予定ではそうなるはずだったな」
「その元婚約者だった私も当然、外交官の妻になるべくしての知識や礼儀が求められますよね?」
「それはもちろん。次期陛下の代わりに挨拶に行くことも、来賓を出迎える役割を担うこともあるだろうからな」
「さて、アレックス殿下。その知識と礼儀を覚えたはずの私は、今どう言った現状でしょう?」
「何を今さら、エルメラ嬢は記憶喪失でっ……はっ!?」
「はい、ご理解いただけたようでなにより。なので私との婚約はh「いやいや、待て待て、そう早まるなエルメラ嬢よ!!」」
危ない、危ない
そんな簡単にその言葉を言わないでくれ。俺の心臓がもたないではないか
「まだ兄上は次期陛下であって、現役ではない。それまで時間はあるのだからエルメラ嬢ほどの秀才ならば問題はなかろう?」
「失礼ながらアレックス殿下。私が元婚約者と婚約した時の年齢を知っておりますか?」
「知らんな。今は俺の婚約者なのだから関係ないと思って調べておらん」
「そうでしたか。ちなみに婚約を結んだのは私が5才の頃でした、その時から未来の王家に相応しくなるよう勉学に励み、記憶喪失した時もまだ勉強の身でしたので……」
5才?5才とな!?
今のエルメラ嬢は17才。記憶を失った卒業式の時は16才だったはずだから……
「12年か」
「まぁ、約ですが」
「12年後は兄上もさすがにもう陛下であらせられるだろうな」
「はい。ですのでどう足掻いても私には時間が無い状態とゆうことを、ご理解いただけたでしょうか?」
「しかしな、エルメラ嬢よ。こう兄上とて今すぐとゆう訳ではないし、俺もこうしてまだ勉学の身だ。そこまで急を要するにことでも無いであろう?」
「まぁ、そうですけども……。そのもしが来たら絶対にアレックス殿下にも、次期陛下夫婦にもご迷惑をおかけしてしまいますわ」
「ハハハっ!そのような心配をかけさせるほど俺は貧弱な男ではないぞ、エルメラ嬢よ。まだ時間はあるのだから焦らずとも2人で共にまた学べば良いではないか」
「アレックス殿下がそこまでおっしゃるなら。……私も貴方の支えぐらいにはなりたいのですのに」
おおう、顔が赤いぞエルメラ嬢
こんなにも俺は愛を伝えておるのに、相変わらず
「ありがとうエルメラよ、愛しておるぞ」
「私も……好きですよ、アレック様」
こうして苦難を乗り越えた俺達2人の愛はさらに深まったのだった
その一年後
陛下である父上が隠居する!と兄上に陛下の座を譲り、母上と共に突然旅立たったことで更なる苦難が俺達を待っているとは知らずに
希望的観測を立てた一年前の俺よ!
目の前の愛しき彼女に今すぐに謝れ!!
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