記憶は彼方にとんでった~ざまぁ計画立ててた過去の私よ、ごめんなさい~

陸昼すず

第1話ざまぁ計画立ててた過去の私よ、ごめんなさい

「エルメラ・ドルサーベル!!今日この場を持って貴様との婚約は破棄させてもらう!!」


青年が声高らかに宣言した

傍らには1人の少女が瞳を潤ませ立っている


その大声はどこかで頭を打ったのか、痛みに響くので止めてほしい



てか、もしかして私に言ってる?

2人揃ってこっちを睨み付けてません??


「貴様が権力に物言わし、アリッサ嬢にしてきた非道の数々は許させるものではない!!潔く罪を認めて、この場で謝れ!!」


うん。これ私に言ってるみたい

けど、その前に聞いておきたいんだけど


「……あの、貴方は誰でしょうか?

あとココはいったいどこで、私は誰なのでしょう??」


私の発した一言で、その場が全て凍り付いた



「しっ、しらを切るつもりか!エルメラ!!」


「えーっと、先程から叫んでるそれが私の名前でしょうか?」


「貴様以外に誰がいるとゆうのだ!エルメラ・ドルサーベル!!」


「はぁ、私も自分がエルメラなんて初めて聞きましたから。ドルサーベルが名字ですかね?」


「そうだ!ドルサーベル公爵の1人娘が貴様だろう!!」


「まぁ!そんな大変に偉い方が私!?」


私、そんな大物だったんだ……

驚いて固まっていると、叫ぶ青年の後ろにある扉がバッと開き


「話は聞かせてもらったぞ!愚弟ぐてい!!」


青年と少し似た男性が現れた


いや、また分からない人が増えたよ


「兄上!どうしてここに!?」


「今日ここで愉快な余興があると、とある人物に聞いてな。まさかこんな事になっているとは」


あ、お兄さんなんだ

それはちょっと似ているはずだわ


そんな青年のお兄さんは何故か弟さんを置き去りにして、座り込む私の前に来た


「エルメラ・ドルサーベル公爵嬢?」


「私の名前がそれで正しいのなら。失礼ですが貴方は?」


「なんと俺をお忘れか。あんなにも長く熱く、語り合った仲だと言うのに」


「貴方と私が?そんな仲だったとは知らず、申し訳ありません。本当に思い出せなくて……」


ごめんね?本当に分からないの


とゆうか、この人さっきから顔近いからちょっと離れてほしいです


「兄上!エルメラは許されざる悪行を重ねた残虐な女です!!すぐにそいつから離れて下さい!!」


「口を慎め!!弟よ、何ら罪の無い女性に対してのこの行動、それでも王家に名を連ねる者か!!」


「何をおっしゃっているのですか兄上!エルメラは断罪すべき罪をいくつも重ねているのです!!」


「口を慎めと言ったぞ!!その断罪すべき罪とは?その証拠は?なに1つ無い虚像の犯行に踊らされていたのは弟よ、貴様の方だぞ!!」


お兄さんは立ち上がりながら懐からどこに隠してたの?といわん厚みの束の紙を掲げて、弟さん達を睨み付ける


「これが本当の真実を記したものだ、後で貴様らにも読ませてやろう。近衛兵!その愚か者2人を連れて行け!!」


お兄さんが出てきた扉から沢山の兵隊さん達が現れ、何やら叫び続けている2人をどこかへと連れ去った




とりあえず、言わせてほしいのだけど



結局どうゆうこと?

ここはどこ?貴方は誰?私も一体誰なの??



なに一つ分からないまま全部が嵐みたいに過ぎてったわ……








ところ変わって、ある部屋の中

その部屋にいるのは私と青年のお兄さん改めてーー


「私の名前はエルメラ・ドルサーベル。ドルサーベル公爵の1人娘で、さっき連れ去られた青年が婚約者の第3王子殿下のグリフィス・イースベア様と」


婚約者だぞ、エルメラ嬢」


「はぁ。で、貴方がその元婚約者のお兄様であるアレックス・イースベア第2王子殿下様と」


「うむ、そうだ。ちなみにエルメラ嬢からはアレックと親しげに呼んでもらっていたぞ?」


「ちょっと覚えがおりませんので、アレックス殿下で」


「なんと!?あんなにも俺達は親しく過ごしていた仲ではないか……」


「あ、そうゆうのちょっと気味悪いので。無しの方向でお願いします」


「そのつれないところは記憶を無くしても変わらないのだな、エルメラ嬢は」


サラッサラの金髪を揺らしてニッコリとこちらに微笑むイケメン様もとい第2王子殿下様


訳の分からないまま、あの大きな部屋からこの第2王子殿下様に連れられて来たのはお城っぽい所に入ったからたぶん宮廷内のどこか


てかつれないって、親しく過ごしてたとか嘘じゃんか

記憶喪失を良いことに、あることないこと吹き込もうとしてないかなこの王子様は


私はどうやらあの大きな部屋、学園の卒業パーティーが行われていた大広間で壇上から転げ落ちたさい頭を強く打って記憶喪失になってしまったのだ


現在は先程の兄弟喧嘩?から解放され親の迎えが来るまでと保護される形でここに運び込まれた訳だが、なぜか私の側を離れない第2王子殿下様


右も左も自分も分からない状態だった為、これ幸さいわいとお話を聞けばさっきみたいな記憶が無いことを良いことに、本当だか嘘だか分からない話も教えてくる


「他に聞きたいことはあるか?エルメラ嬢の為なら俺が何でも答えるぞ??」


「いえ、もう大丈夫なんで。家族が来たら家族に聞きますし」


「そんな悲しい事を申すな、エルメラ嬢よ。俺では役不足か?」


「そうゆう事ではなく。アレックス殿下はあることないこと言うので、ちょっとご遠慮願いたいだけですよ」


「失礼な、俺は全て真実しか話してないぞ。愛しのエルメラ嬢に嘘などつくわけがなかろう」


「本当にそうゆうの気持ち悪いので、ぜひ無しでお願いします」


目頭を押さえてうつむく第2王子殿下様


その嘆き悲しむ姿さえ絵になるってイケメンってズルい。あと嘘泣きだって分かってるから凄くウザい


「とりあえず、ある程度は分かりましたので今までありがとうございました。もう、チェンジで」


「まあまあ、待て待て、そう邪険に扱ってくれるな。俺は少し悪ふざけをしただけだ」


「どこが少しですか。長く熱く語り合ったとか、親しく過ごした仲とか、鳥肌レベルに気色悪いです。真面目に止めてください」


「……そこまで言われると流石の俺でも傷付くぞ、エルメラ嬢よ」


冷やかな目で見ていた私に対して、第2王子殿下様は少しだけ申し訳なさそう答えた


「冗談はさておき、本題はきちんとあってだな。これを読んでくれないか」


それを一番先に言ってほしかった


そう言って第2王子殿下様から渡されたのは複数の封筒。裏にはE.Dとイニシャルが書かれていた


すでに封は空いており、中の手紙には元婚約者である第3王子殿下とその友人、そしてそれを誑たらし込んで国の財産を食い潰し、隣国に情報まで横流しにし、それを手紙の主に擦り付けようとしていたとして書かれていた人物は元婚約者と一緒に連れ去られた少女の名前


他の手紙には手紙本人の無実を訴えながらそれらを裏付けるちゃんとした証拠や証言、最後には卒業パーティーで逆に問いただしてやるとまで力強く書かれていた


「これは、いったい、どなたの……?」


「エルメラ嬢、貴方が俺に宛てた手紙だ。真実を知り、この国の行く末を嘆いた貴方は俺にこの手紙で密かに協力を訴えてきたのだ」


「これは、私の手紙……」


「そう、貴方の手紙だ。これがあったからこそ俺は貴方の危機に駆け付ける事ができたのだ」


衝撃である


私は一体どうやってココまでの真実を知ることが出来たのだろうか


こうなることが分かっていたかのような考えに、それを元にしたアリバイ作りに証拠の用意、果てには第2王子殿下様にまで協力を要請していたなんて


現在の私はそんな事が裏であったと綺麗さっぱり忘れてしまっているが


「あと、愛しのエルメラ嬢とゆうのも嘘ではないぞ」


余りの出来事にうつ向いていた私は思わず顔を上げた


「でなければ、こんな1人の令嬢相手に俺が直接動くわけないだろう」


「え……。いや、でも私は……」


「記憶が無いのがなんだ、エルメラ嬢の本質が変わった訳ではない。俺は1人でも負けず戦い続けてきた貴方だからこそ、助けになりたいと思ったのだ」


第2王子殿下様、いやアレックス殿下は膝をつき私の右手にそっとキスを落とした


「今だからこそ言える。エルメラ・ドルサーベル公爵嬢よ、俺と将来を誓う婚約者になってはくれないだろうか」


顔がとても熱い。きっと私の顔は真っ赤に染まっているんだろう

こんな事になるなんて、きっと記憶喪失前の私ですら想像していなかったことだ


コクリと小さく首を縦に降った私を見て、アレックス殿下は意地悪そうな勝ち誇ったような笑みを浮かべた








ざまぁ計画立ててた過去の私よ、ごめんなさい


記憶は彼方にふっとんで高笑いは出来なかったけれども、未来の私は幸せに生きていけそうです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る