小説の主人公みたいだ。

深夜 酔人

いつか

 殆ど全てのことがうまくいかないようなある日の夜、私は思いました。

 不良になれたら、と。

 不良になれたら、人生は最高です。思ったことをなんでも言えます。やりたいこともすべて出来ます。ムカつくやつなんて、顔をぶん殴りゃいいのです。悪友が出来ます。友達も出来ます。この友達は本当の友達ではないかもしれません。ですが、今のゴミのような人生よりはまだマシです。

 不良になれたら、馬が合わなかったクズのあいつとも仲良くれたはずです。そうしたら私は虐められなかったでしょう。寧ろクラスの王様として君臨できるでしょう。みんなから裏で嫌われている、裸の王様に。今の消しカスレベルの地位よりまだマシです。

 そんなことを考えたあと、私は私自身に軽く失望します。虐められた時に誓ったはずだろう、向こう側に堕ちないと。何度だって、ヤツらを見下していたはずだろう、と。心の中の私が責め立てるのです。今の私と、不良りそうの私が互いに暴走して、気分は綱引きの綱になったような感じです。どうすることも出来ず、独り世界に沈んでいく。そんな恐怖が襲ってきて、私は毎晩泣きそうなのです。


 今だって震えています。必死に抑えて忠実に演技します。演目は「明るく元気な私」。私は最も演技を嫌っていたのに。そんな自分に嘔吐しそうです。


 理想の甘い誘惑と、

 今の自分の現状に、

 板挟みされた私は、

 とても、苦しいのです。


 ふと、私は小学生の頃の夢を思い出し、苦笑しました。なぜならそれは今かなっているからです。


 ははは、まるで小説の主人公みたいだ。


 滑稽ですね。

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小説の主人公みたいだ。 深夜 酔人 @yowaiyei

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