僕はまだ猟奇的な彼女を婚約者と認めた訳ではない！

第14話 僕はどうして婚約者が怒っているのか理解できない！

　僕は何故、藤咲さんが腹を立てたのかを考えていた。何か気分を害する事言ったかな〜。まったく身に覚えがないんだけど。

　でも、立花さんも謝った方がいいって言うんだよね。

　でもなぁ、そんな悲しむようなか弱い女の子じゃないでしょ？　藤崎さんは！

　まったく……。

　授業の間中、その事ばかり考えていた為、僕の耳に先生の言葉はまったく頭の中に入ってこないのだった。

　昼食時間になり、機会を見つけて話を聞こうと思うも、藤咲さんの席の周りに生徒が群がっていた為、声をかける事もできないまま……そして、放課後を迎えた。

　放課後になっても、藤咲さんの周りには数人の男女が離れることなく話しをしていた。

「俊一、帰るんだろ？　ゲーセンでも寄って行くか？」

　健が僕にそう言って話してくる。

「う〜ん、行きたいのは山々なんだけど……ちょっと用事が……」

「はっは〜ん……これか？」

　ニヤニヤしながら、健は僕に小指を突き立ててきた。

「ん？　小指…………ち、違……」

　否定しようとしたら数人の男女が反応する。

「えええぇぇ〜〜〜」と女子の声。　

「なにいいぃぃ〜〜」と男子の声。

　藤咲さんに話しかけている生徒達もこちらを振り向いていた。

「うわっ？！　な、何！　……い、いや、その前に違う……」

「ちょっとちょっと、時任君！」

　否定しようとしたところで、クラスの女子達からつめ寄られる。

「いつの間にそんな子いたのよ！ねえ、あんた何か知ってた？」

「まったく知らなかったわよ！っていうか、時任君て坂口君と一緒で女嫌いじゃなかったの！」

「時任〜〜！　テメエ俺達を裏切るつもりか！！」

「お前は坂口と違って、俺達が結成したザ・モテナイズの仲間だと思ってたのに！」

　一体何なんだよ？！

　ちょっ、待って！

　それ以上近寄らないで……あと何、その嫌な名前の仲間は？

「だから、誤解なんだよ！　健が適当言っただけだから！！　健、適当な事言わないでよ！」

　と、僕が否定したのと同時に

　バンッ！

　と後ろから大きな音がした。

　振り返ると、藤咲さんが机に手をついて立ち上がった所だった。どうやら、その光景を見るに耐えられなくて机を強く叩いたのだろう。

　藤咲さんに話しかけていた男女達もいきなりの事に驚いている。

　藤崎さんは僕の方に顔を向け強い表情で睨みつけると、すぐに席を立ち、教室を出て行った。

　それを見た僕の頭の中には、今朝香川さんから言われた言葉が繰り返し流れていた。

「泣かせたら……当てますから……当てますから……当てます……」

　ひぃっ！！！！　や、やばい！　も、文字通り、消されるーー？！

　そう思った僕は必死の思いで、藤崎さんを追いかけるために教室を飛び出したのだった。