第11話 僕が感動の再会なんてするはずな……!
翌日、いつもより朝早く起きた僕は、早目に登校する事にした。慣れない事をしたせいで、とんでもない光景を目撃する。
教室に着いた僕は誰もいないだろう教室の扉を開ける。
「?!」
「え?」
さぞや、僕は間抜けな顔をしていたと思う。それぐらいに何が起きているのか一瞬理解できなかったからだ。
僕の目に映ったのは、藤咲さんと立花さんの二人が抱きしめあっている姿だった。
「…………」
「…………」
え〜と、これはどう理解すれば良いのでしょうか? たぶん、僕が入ってはいけない所に現れたってのは間違えないのかな?
とりあえずは…………。
「お、お、お邪魔しました〜!」
パニクった僕はそう言って、教室扉を閉めて出て行こうとした。
「ま、待ちなさい俊一君!」
「ま、待って!!」
藤咲さんと立花さんが、二人で僕を引き止めよう腕を掴んでくる。
「ご、ごめん! 見ようとした訳じゃないんだ?! だ、大丈夫! 絶対に誰にも話さないから!!」
もう頭の中が真っ白になり、自分でも何を言ってるのかよく分からない。とにかく、二人の抱きしめあっている姿が鮮明に頭の中に映しだされてショックだった。
「ええい、この人は! 落ち着きなさい!!」
「ぎゃあ?! い、痛い……ぐはっ……」
そう言って殴ってくる藤咲さん。
「た、たかちゃん?! やりすぎだよ!」
「た……か……ちゃん?」
「あかちゃん、俊一君にはこれぐらいで丁度いいのよ! ほら、しっかりしなさい!」
胸倉を掴みぐらぐら頭を揺さぶってくる。
「あか……ちゃん?」
何かが思い出せそうなのに、これじゃあ逆に記憶が飛んじゃうじゃないか!
「うわ?! わ、わ、分かったから〜やめてえぇ〜!」
「本当に分かったのね? これで、また取り乱したりしたら殴るからね!」
どうしてそう、すぐに殴るって発想になるかなぁ!
「う、うん……」
そうして、こんな時間なら誰もいないだろうと言う事で、僕達は屋上で話しをする事にする。
藤咲さんは僕の目の前で、偉そうに腕組をする。大きい見事な胸が強調される格好だ。
……はっ?!
僕の目は思わず藤咲さんの胸にいってしまった。
横からじ〜っと僕を見る、立花さんの視線が視界に入り慌ててそらす。
ぼ、僕は何を見てるんだ!
「よし、それじゃあ説明するわね! まず先に言っておくけど……私達は男が好きだから!」
「ちょっ! た、たかちゃん! そ、その言い方何かおかしいよ!!」
立花さんが顔を真っ赤に染めて抗議する。
「……あれ?……つ、つまり! 私達は普通だから、さっきのあかちゃんと抱きあっていたのは俊一君の誤解だって事。分かった!」
怒った顔で一気にまくしたてるようにして話してくる。
「わ、分かったよ」
「でさ、私がこんなにあかちゃんて立花さんの名前を呼んでる訳だけど……俊一君は何か思い出さないの?」
「………………」
思い出しそうだったのに、君が頭を揺らしている時に忘れたんだよ!
「覚えてる訳ないよたかちゃん。私、男の子と遊ぶの初めてで、緊張しちゃって自己紹介とかしてないと思うし、もうずいぶん昔の話しで……確かそんなに遊んだ事ってないと思うよ」
……あかちゃん……たかちゃん……ずいぶん昔……そして、遊んだ……………………え……い、いやそんな…………?!
自分の思ってる事に驚いてしまう。ま、まさか、そんな偶然なんて……。
「……ね、ねえ、立花さん?」
「うん? 何?」
優しい眼差しで、真っ直ぐに僕の目を見て話しを聞いてくれる。
「……昔さ……海岸で……き、凶暴な女の子とその子に殴られている男の子と遊んだ事ってあったりする……かな?」
すると、立花さんは顔をぱあっと輝かせて僕を見てくる。
「お、思い出してくれたんだ……し、俊君!」
「ほ、本当に? 本当にあの時の女の子なの?!」
「うん、そうだよ! あ〜、良かった。思い出してくれて嬉しい」
そう言って僕の両手を握りしめて、喜びを表現してくれる。
「し、信じられない……………信じられない……」
「な、何で2回も同じ言葉を……それに、私もこんな偶然てあるんだなあと思ってびっくりしています」
そう言ってにっこり微笑む。
まったく、気づかなかった。
どうして女性に対して恐怖心がある僕が、立花さんにだけは平気で話しかける事ができたのか分かった気がする。
そうか…………立花さんがあの時の女の子だったのか。
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