緩衝地帯(Buffer zone) 2
戦線の概念は知性と倫理観を持った敵対勢力同士にのみ通じるものだ。人類史上、正規の軍事組織は陸上の戦いにおいて、常に線の概念を念頭に戦術を組み立ててきた。攻める側は如何に敵の戦線を分断するか、あるいは突破するか、それとも包囲するかを考え、守る側は如何に戦線を維持するかを考えてきた。逆説的に考えるならば、正規軍がテロリストやレジスタンスのゲリラ戦に手こずるのは自明だった。ゲリラ側が線の概念を用いずに戦うからだ。ゲリラは密林の奥深く、砂丘の海、そして市街地の中心部、あらゆる場所で戦いを一方的に始める。それは線では無く、突発的に始まる点の戦いだった。これは魔獣との戦いにも同様だ。
始まりからして奴等は線の概念を持たずに、この世界へ侵攻してきた。BMは世界各地へ突然現われ、魔獣を周辺にばらまいた。敵味方が入り乱れた状態で人類は戦うことになり、線の概念で戦うことが不可能だった。だからこそ、緒戦において人類は甚大な損害を出すことになり、戦線を確立するまで魔獣に対して後手に回り続けた。人類側が魔獣に対して拮抗するようになったのは、多大な犠牲と引き替えに戦力の集中と戦線の構築に努めたからだった。西
しかしながら、北米において戦線の構築は限りなく不可能に近かった。理由は二つある。一つ目は
同様の現象はロシアや中国、印度で発生していた。それらの地域は広すぎる上に、多様な人種、部族構成が団結の弊害となり、一部地域は無政府状態と化している。半身とはいえ、領土を保った合衆国は
こうした現象を打開するために創出された概念が
今井の中隊は哨戒部隊に属していた。彼の任務は
敵獣との距離が400メートルを切りつつあった。
「迫撃砲、撃ち方はじめ!」
背後から火薬の弾ける音が聞こえ、間もなく小規模な爆発が目前で生じた。
※次回12/3投稿予定
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