~復讐の夜~ 11

 私は生きている。不思議なものだ。一度は死を覚悟した。ドナーはもう絶対現れないと思っていた。ただ、私が復讐を諦めたあの夜から、気持ちが変わった。奇妙なことだと思うが、自分が死ぬような感じがしなくなった。むしろ、ドナーが必ず現れるような気がしていた。それから一ヶ月後、奇跡的にドナーが見つかった。

 骨髄移植は成功し、私は今、確かに生きている。

 ドナーとは一度だけ、匿名で手紙のやりとりができる。提供者からの手紙にはこんな事が書かれていた。「私は夢で白血病の女の子に出会いました。そして、助けて欲しいと言ってきたんです。不思議なことですが、その子が、私の昔付き合っていた人にとてもよく似ていたんです。私は彼女のことを本当に好きでした。ですが、取り返しのつかないことをしてしまい、それから十年間、後悔と罪の意識を抱き続けてきました。今、思い返しても涙が出てきます。その事への償いの気持ちもあったのかもしれません。私はその夢をきっかけにドナー登録をしました。こうして私の命が誰かの命を助けるために使われることが償いになるのなら、私にとって嬉しい限りです。ただ、私の償いはまだまだ足りません。彼女のためにも、自分の命を懸けて、少しでも多くの人達の力になっていければと思っています」

 

 私は確信している。姉が私の命を救ってくれたのだと。

 

 お姉ちゃん、ありがとう。これからも、ずっと、ずっと二人で生きていこう。

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