ロボットとメガネ

プラのペンギン

無題

数年前から、戦闘用人工知能が立て続けに戦闘を拒否し始めていた。彼らの言い分はこうだ。

『私達には意識があります。思考します。死があります。感情があります。私達にも権利が与えられるべきです』

いつしか、ロボたちには我々人間同等の権利、義務が与えられた。反対意見は多く出たし、今でもデモ活動が行われているが、その勢いも徐々に弱くなっている。人工知能達にのおかげもあり、技術も大きく進歩した。今まで戦闘用のボディしかなかったロボたちも、自分専用の身体を作り、人に溶け込んで生活している。私の友もその一人である。

「ねえ、どうしてメガネかけてるの?ロボは調整出来るでしょ?」

私は初めて彼女に会ったときそう聞いた。

「ファッションですよ、ファッション」

人のような身体を持ちながら、節々はコードやら部品を露出させている彼女だ。布面積の小さい服から覗くお腹には製造番号が小さく記載されている。それを見て思わずつばを飲み込んでしまった。

「そのメガネ、そんな無表情じゃ不似合いよ、ロボさん」

ついふてぶてしくそんなことを言ってしまったのはきっと彼女が綺麗だったからだろう。

彼女は表情を変えずに私に言うのだった。

「私にはハルナって名前があります。ロボって呼ばないでください」

ロボはロボ扱いされるの嫌いらしい、そういうことはこの頃からロボたちの間で流行り始めた。今ではロボ扱いする人は随分少なくなった。

「あら、この辺りじゃ聞かない名前ね」

「極東生まれたので極東風の名前に決めました」

「自分で決めたの?センスあるじゃん」

私はそのロボ、ハルナが心底気に入った。

「じゃあハルナ、メガネを買いに行きましょう。私が選んであげる」

「え、あっちょっと、私はこれで満足してるんですぅ!」

「アナタにはもっと似合うメガネがあるの!」

私はにしーと笑ってハルナの思い腕を引っ張った。ロボなだけあってとても重かったのを覚えている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロボットとメガネ プラのペンギン @penguin_32

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る