11
「織、おまえテスト範囲同じだっけ?」
期末テスト前日。
リビングで教科書ぐらい眺めてみようかなーなんて思いながらもゴロゴロしてると。
陸が、あたしの頭を鷲掴みにして言った。
「…範囲?知らない。」
「何だよ、おまえはー。授業中何してんだ」
「そういう陸だって、知らないんじゃない」
あたしと陸は、自分でいうのも何だけど頭がいい。
常に学校トップの成績を二人で競っていた。
というのも、陸が異常なまでの勉強好きで。
あたしは、よく陸につきあわされてテキストを何冊もやったもんだわ。
ってわけで、あたしの頭の良さは、陸のおかげでもあるんだけど…
「確か数学は女クラの方が進んでたよな」
陸が教科書をパラパラとめくる。
「何なの?」
「
「…光史?」
「
「ああ…」
陸の、こっちでの大親友。
珍しい。
いつもは、陸が朝霧君ちに遊びに行くのに。
初めてだな…「友達」とかいう人間が家に来るの。
ちなみに、二階堂組って看板は…あたし達が越して来てからは見ていない。
…気を遣ってくれたのかな?と嬉しい反面、ヤクザがこれでいいの?って心配でもある。
「ね、陸はどうして朝霧君と仲良しなの?」
あたしは、教科書に目を落としたまま問いかける。
「あ?」
「なんか、タイプ的に違うような気がする。今までの友達と」
「そっか?すっげー、いい奴だぜ?」
朝霧君はクールな感じ。
陸の今までの仲良しといったら。
「坊っちゃーん、お客様ですよー」
玄関から沙耶君の声がして。
「あ、来た」
なんて言いながら、陸は嬉しそうに玄関に向かった。
一緒に勉強…ね。
なんだか、少しだけつまんない。
いつも、陸と二人だけでしてたのに。
「こんにちは」
口唇を尖らせてるところに朝霧君がやって来て、慌てて笑う。
「こ…こんにちは」
「ごめんね、二階堂さん。勉強のじゃまして」
「あ、いや、全然…」
「何だよ、二階堂さんだなんてさ。織でいいって」
陸が間に入ってそう言って。
朝霧君は首を傾げて笑ってる。
「こいつも、朝霧君じゃなくていいって。光史だよ、光史」
あたしと朝霧君は顔を見合わせて笑う。
「いきなり、呼び捨て?」
「俺は陸と違って、はじけてないからなあ…」
「何だよ、それは。んな、他人行儀やめろよ」
「……」
あたしと朝霧君が黙ってると、陸は教科書を開きながら。
「あ、どうせ他人だもんね、とか思ってんだろ」
って、眉間にしわを寄せて。
「織は俺と双子なんだぜ?俺が呼び捨てなら、織も呼び捨てさ」
やけに説得力のある声でそう言った。
こうして、初めて…三人での『勉強会』が始まった。
舞とも、森魚ともした事のない勉強会。
と言うのも…
あたしと陸の勉強のペースって、たぶん…すごく早い。
本当なら、わざわざテスト勉強なんてしなくていいんだけど。
二人とも、どっちが一位を取るか。って競ってるから…
テスト前日に、それこそテスト範囲なんて知らなくても、一気に復習気分で勉強する。
今回は期末テストだから、一学期分丸々復習。
…朝霧君、あたし達のペースについて来れるのかな…
「え。もうそこまでやってんの」
案の定、朝霧君はついて来れなかった。
でも頭が悪いわけじゃないな…って思った。
最初に陸がポイントを押さえるコツを教えると、それはすぐに理解したみたいだし。
…だけど仕方ないよね。
あたし達は、少しばかりIQが高いし。
「俺らと同じようにやらなくていいっつったのに」
「いや、なんか興味あって」
「ここと…ここからここまでやったらいいって」
「すげーな。ヤマも張れるんだ?」
「たぶん、だぜ?」
朝霧君は陸をマジマジと見て。
「助かるよ」
ちょっと…いい顔をした。
だけど…
「坊ちゃん」
真顔でそう言って。
「あー!!もう!!人前で呼ぶなっつったのに!!沙耶ーーー!!」
陸は真っ赤な顔をして、庭の掃除をしてた沙耶君に突っかかったのよ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます