誰からも必要とされない僕の異世界転生

野口マッハ剛(ごう)

どこにあるの?

 学校の先生に怒られた。理由は授業中にライトノベルを読んでいたから。クラスメイトはみんな笑っている。僕だけが恥ずかしい思いをしている。体調が悪くなったので早退することにした。なんだか気分が悪い。

 帰り道で歩きながら、ライトノベルを読む。くすくすと笑う声が聞こえる。なんだろう? 顔を上げて周りを見た。道行く人々が僕の読んでいるライトノベルの表紙を指さして笑っている。

 僕は顔から火が出そうな思いで、カバンに読んでいたライトノベルを入れて、足早に家を目指した。今日は何かがおかしい。なんで僕の行動を笑うのだろう。

 家に帰ってリビングでライトノベルを読む。するとお母さんがやって来て僕を怒鳴った。僕はとても悲しい気持ちになった。ライトノベルの世界が僕にとって憧れなのに。家を飛び出した。

 こうなったら、異世界に行こう。

 ライトノベルの世界に行くにはどうしたらいい。しばらく考えてみて、街を出た。山へ向かう。きっと異世界のようなものがあるに違いない。僕の足は軽く感じた。

 いざ山に来たはいいものの、異世界なんて当然どこにもない。頂上を目指してみる。ドラゴンとか出ないかなと妄想が膨らむ。道の途中でだんだんと息があがり始める。喉が渇いた。でも飲み物がない。僕は頂上を諦めて街の方角を見た。

 山の途中からでも、街の景色はよかった。自分の住んでいる家はどこかなと目で探す。風が気持ちいい。これでドラゴンが飛んでいたら最高なのに。しばらく街を眺めていた。

 夕方になった。僕は色々考えて家に帰ることにした。異世界なんてどこにもない。けれども、僕はいつか異世界に行きたい。誰からも必要とされていないから。

 家に着いたのは夜だった。お父さんとお母さんが玄関で立っていた。ヤバい、怒られる! 僕はビクッと体を震わせた。でも、両親は怒る代わりに、何があったの? と心配してくれた。


 僕はまた学校に行く。カバンにはライトノベル。いつか異世界に転生できる夢を見ている。


おしまい。

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