生きて人を愛すこと

めろもん

第1話 私のなまえ

一つの箱から何通もの手紙が出てきた。

父と母が離れている間に交わしていた文通だった。

母は里帰りで実家に戻った時、父と文通でやり取りをしていたらしい。


なっちゃん、そこに記された名前は見覚えもなく、聞き覚えのないものだった。

文中では何度もなっちゃん、と呼び合う父と母。

「誰のことだろうか」

と、疑問にはあったものの、会話の内容からして妊娠中の赤子の話なのはわかった。

母がお腹の赤ちゃんの様子を父に伝える文、とても優しく温かいものだった。

その言葉たちは、母が子を待ち望んでいるのが読んでいる私にも伝わるほど、深く優しいものだった。


なっちゃん、それが自分だと知ったのは、それから少し後のことだ。


名前の画数や、運勢やらとで今の私の名前に変えたと聞いたけども、そんなことはどうでもよくて愛されていたという暖かさを知れたことが大きかったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る