告白死 なおしてきました

新吉

第1話

 私、ここに登るのが夢だったんです。ずっと準備してきた。不思議そうな顔をしてますね。私は皆さんが知っている方の私ではありません。ここでは死を人目に触れることを避けますね、そうして山に捨てていく。わずかな食料を置いて。あいたっ、早く本題に入りますか。私は山に軍団を作りました。死に損ないの軍団。今こっちに向かっています。あは、笑うのも無理ないですね、あんな奴らに何ができる。手も足もなければ、ジジイとババアばっかり。奇形の子も人形症の子もみんなみんな狂ってる。でも彼らには1つ共通していることがある。簡単ですね、山に捨てられて恨んでいるんです。いた、いたいっ!そうねみんな知ってるわね!でもそのまま放置したからこうなったのよ。


 私は彼らに教育をした。傷の手当てをして薬と食事を与えて。そう私だからこそできることよ。初めは私にも攻撃してきたわ。私を殺したらこの大量の食事を持ってこないと言ったわ、言葉が通じない時は訳してもらった。勝手に周りで殺し合いを始めるときもあった。うるさいからやめてもらった。私はひと突きすれば人が気絶する場所を知ってる。まあ勢い余って死んじゃったこともあったけど、向こうじゃ弱ってる人たちばかりだから当たり前ね。でも私の献身的な世話のおかげで彼らは回復していった。そして私は作戦を伝えたわ。あとで話すわね。


 その前にどうして私がそんなに自由に動けたかだけど、みんなが知ってる私の父はもういない。殺したの。でもみんな滅多に診療所なんて来ないから気づかなかったでしょ。小さい頃からずっと、山に捨てられた妹に会いに行きたかったのに、妹なんていないの一点張り。父から習った護身術と治療の知識を身につけてからこっそり会いに行ったわ。それはそれは綺麗なお人形になってた。そして彼女を撫でていた片足の男に言われた。



「捨てられたのか」


「私はその妹に会いに来た」


「1人でか?」


「1人で」


「もう帰れないよ」


「来た道を辿るから大丈夫」


「どっかで食われておしまいだ。俺は片足がねえ、もう腐ってる。だから時々来るやつを襲う力もない。俺は襲えないが、どっかの誰かは襲うぞ」


「帰っていっぱいご飯持ってくるよ!」


「そんなことできるもんか」


「できるよ」


「約束な」



 約束した小指は噛まれた。家に帰って消毒してたら父に見つかって、でも犬に噛まれたと言ったら納得してくれた。おてんばも大概にしろよ、と。薬を塗って包帯をしてくれた。父に言われたら苦い薬でも飲んだ。よく効くからだ。あとで気づいたけど父は私が山に行くのを知ってて放置していた。薬や包帯も拝借してたから、傷の手当てをしてたと思ったんだろう。診療所のお客さんなんて滅多にない。いじめられるし、そんなに裕福じゃない。食料は他のとこから盗んできた。バレた。怒鳴られた。母は泣いていた。人形症の妹を気持ち悪いと言った母。あんなに綺麗なのになあ。



「あんたもそのまま山から帰ってこなければいいのに」



 私もいらない子なのか。私は2人を殺した。父にはだいぶ抵抗されたけどなんとか殺した。父は最期に笑っていた。


 私はそのあとも診療所の仕事をしながら山に行ってはみんなに教えた。言葉や護身術、この国の人たちの話、あとみんなに名前もつけたわ。告白死があること、簡単な治療法、私の作戦。それには準備が必要だと繰り返した。武器も杖も、薬も毒薬も、拝借しては山に行ってみんなでああだこうだ悩んでさらにいいものに作り上げたわ。


 私がこうして広場で告白をするからみんなで攻撃するのよ。簡単な作戦のようで私はいろんな仕掛けを準備した。広場に集まってるみんなは全員じゃないでしょ?今なら家にいる人は少ない。あははは、今から家帰ったって無駄よもう遅いわ。あは、ほら煙が見える。家を燃やしてるのは、奇形の男の子のマルよ。今角を曲がってきたのはおじいちゃんのサイさん。私と一緒に先生役をやってくれたわ。あの子はカノン、綺麗でしょ。動かなくなっていくの。そこの男の子はニノ、小人だけど誰よりも素早い。毒矢の人は片足のサラム。みんな私の大切な子どもたち。年上もいるけどね。私子どもが産めない女なの。年頃になってから父から言われた。母は知らない。私と父だけの秘密。お前は子どもができないから大丈夫だって何度も犯された。何が大丈夫なのかわからなかった。だからお腹に宿した子ども捨てるなんて考えられないわ、狂ってる。みんな復讐するのよ。子を捨てた親を、親を捨てた子を。だって心の傷はなおらないんだから。


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