語るに面倒臭がらない。一つ一つを見知ったもので埋める。 そういうことが、写実的な小説の書き方に必要なものであると思います。 そして、この作品は今現在では思い浮かべる他ない江戸の様子を、必要を存分に書き出すことで描ききった、絵になる一作とすら呼べるものでしょう。 そんな堅牢な情景に、手抜かりなく描かれた妖怪変化と人間達が情と生きるその様子。もはやそれは新たな現。一つの世界と自分には感じ取れました。 作者様の力量には、頭が下がるばかり。これから展開されて広がっていくだろう世界が楽しみでなりません。