243
真由子の告白を聞いて、柳田先生はひどく驚いた顔をした。
でも、告白をした真由子のほうは自分でも少し驚いたくらいに冷静だった。
……告白も、言えないかもしれない、と直前まで思っていたのだけど、きちんと言うことができた。
あとは柳田先生の答えを待つだけだった。
柳田先生はしばらくの間、真由子の顔をじっと見つめていた。
それで、柳田先生は真由子が冗談でこんなことを言っているのではないということを理解したようだった。
「小島さん」
「はい」真由子は言う。
「タバコを一本だけ吸ってもいいでしょうか?」柳田先生は言った。
真由子は柳田先生がタバコを吸うことを知らなかったので、少し驚いてから「どうぞ」と柳田先生にそう言った。
「すみません」
柳田先生は真由子から少し離れると、そこでコートの内ポケットからタバコとライターを取り出して、口に加えたタバコにライターで火をつけた。
真由子には、そのタバコがなんと言う名前のタバコなのかはわらかなかったのだけど、外装は白色だった。
柳田先生は冬の夜空の下で、美味しそうにタバコを吸った。
「柳田先生。タバコ、吸われるんですね」と真由子は言った。
「はい。たまに」柳田先生は言う。
柳田先生はコートのポケットから携帯用灰皿を取り出すと、何度かそこに灰を落としながら、数分をかけてタバコを一本吸い終わった。
柳田先生は真由子の前に戻ってくると、そこからじっと真由子のことを見た。
真由子は柳田先生の返事を待った。
こうしてなにかを待つことは、小島真由子の得意技の一つだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます