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 しばらくそうして一人でぼんやりとベンチの上に座って過ごしていると、遠くから足音が聞こえてきた。

 恵かな? 

 そう思った小春は恵に「さっきはごめんなさい。つい気が動転してしまって」と謝るために、その足音のする方向に目を向けた。

 でも、そこにいたのは恵ではなく、さっき、彼の隣に立っていたポニーテールの髪型をした綺麗な女子高生、その人だった。

「え?」思わず小春は腰をあげてそんな声を出してしまった。

 その声でポニーテールの女子高生は小春の存在に気がついて、小春を見ると、「待って! 逃げないで!」と小春に言った。

 その声は、とても優しい声だった。

 小春は、思わず自分がまたポニーテールの女子高生から逃げようとしていたことに気がついて、……恥ずかしくなった。

 小春はベンチに座った。

 すると、ポニーテールの女子高生は軽快な足取りで、すぐに小春の目の前までやってきた。

「さっきは驚かせちゃってごめんなさい」とその女子高生は言った。

「私は、山里椛って言うの。あなたは高松小春さん、でいいんだよね?」と椛は言った。

 一瞬、小春はなんで椛が自分の名前を知っているのだろう? とすごく驚いたのだけど、すぐに、きっとこの場所にいない恵のせいだ、と気がついて、それから、じっと椛の顔を見た。

 ……小春の見間違えではなくて、椛はとても綺麗な人だった。

 少なくとも小春は、自分と椛では明らかに椛のほうが可愛くて綺麗だと、その事実は心の中で素直に認めた。

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