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山里椛は上品なキャメル色をした制服に、緑色の短い学生用スカートを履いていた。それから、靴も靴下も、腕にしている時計も、どれも上品なものばかりだった。
その制服がどこの学校の制服か、小春は知っていた。
それはとても有名な都内にある女子お嬢様学校の制服だった。その学校の生徒にしては椛のスカートは短かったが、それ以外のところは、椛は確かにいいところのお嬢様と言った雰囲気を持つ、その制服を着ていることになんの違和感もないような女の人だった。
小春は、それ以上椛の姿を見ないようにそっと下を向いた。
「……なにか、私にご用ですか? 山里さん」と小春は言った。
「うん。えっと、まずあなたの誤解をといておこうと思ってさ。……それで、その、とりあえず立ち話もなんだから、隣、座ってもいいかな?」椛は言う。
「……どうぞ」小春は答える。
本当は少し嫌だったけど、断る理由が小春には思いつかなかった。
「ありがとう」そう言って椛は小春の隣のベンチの上に座った。
「本当はね、四ツ谷さんとか、優とかにも、一緒に来てもらおうかと思ったんだけど、最初は二人だけで一度話をしたほうがいいかなって、思ってね。もちろん、私も高松さんと二人だけできちんと話がしたかったし、だからそうさせてもらったの。あ、えっと優っていうのはさっき私と一緒にいた男子高校生の名前ね。神田優。これから、私ともども、よろしくね」
……神田、優。
それが彼の名前なんだ。
小春が無言でいるので、椛は話を続ける。
「それでね、話っていうのは、私と優との関係のことなの。私と優はね、きっと高松さんが考えているような、そんなに親密な、……いや、えっと、もちろん仲はいいんだけど、私と優はただの友達であって、とにかく、そういう関係では全然ないの。まずはそれを高松さんに、誤解をさせちゃった私の口からきちんと伝えたかったの。そのために私はここに一人できたんだ」と小春の横顔を見ながら、にっこりと笑って椛は言った。
その言葉を聞いて、ずっと下を向いていた小春は、そっとその顔をあげて椛を見た。
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