149
それから、木野さんは葵の唇にキスをした。
それは本当に突然の出来事だった。
少なくとも、葵が考えていた未来に起こる出来事ではなかった。
それは、立花葵の初めてのキスだった。
葵はなにも物事が考えられなくなった。
通りにいた少数の人たちが、二人の姿を見て、小さな歓声をあげたりしていた。
それから少しして、キスが終わると、葵は木野さんの顔をじっと見つめた。
「わかった。……こちらこそ、よろしくお願いします」
と、言って木野さんは葵の告白を受け入れてくれた。
そのときの木野さんは、いつものように優しい顔で、笑っていた。
その日から二人は正式に恋人同志としてお付き合いをするようになった。
二年間、お付き合いを続けて、それから婚約をして、そのさらに一年後、葵の大学の卒業を機会に二人は結婚をした。
結婚式の会場には、懐かしい、葵の大切な人たちがたくさん、二人を祝福するためにやってきてくれた。
その中には林朝陽がいたし、梢明日香がいたし、岡田匠がいたし、西山茜もいた。……そして、林朝陽の隣には、五十嵐響子がいた。
みんなは「おめでとう」と言って葵のことを祝福してくれた。
葵は「ありがとう」と言って、その祝福を確かに受け取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます