130
「……少しだけ、考えさせてください」桜は言った。
それは自分でも意外な言葉だった。
楓はこの場所でごめんなさい、と断られることを覚悟していたのか、少し驚いた表情をしていた。
「もちろんです。でも、僕はあと一週間で、東京を離れます。だから、それまでに返事を聞かせてもらっても、いいですか?」と楓は言った。
桜は「はい」と言って、楓に返事をした。
楓は「わかりました」と言って、二人はその日、その場所で別れた。
その次の日、桜は鈴を小森神社に呼び出した。
「え? 告白されたの? 小町くんに?」鈴はとても驚いた顔をした。鈴は律くんを通じて、楓のことを知っていた。律くんから「こいつ、これの友達なんだ。中学のときに引越しをして、今はこっちには住んでいないんだけど、夏休みで戻ってきていてさ、ほら、あの桜にラブレターを書いたやつだよ」と言って、楓を紹介をされたらしい。
「うん。それで困ってるの」
「困ってる? どうして?」鈴は言う。
「私、今は誰とも恋愛をする気になれないの」桜は言う。
桜は今日も、仕事があって巫女服を着ている。巫女服姿の桜はそう言ってから、大きなため息をついた。
鈴は出してもらったお茶菓子のせんべいを食べながら、桜の話を聞いている。
「なのに、その場で小町くんの告白を断ることができなかったのよ。少し考えさせてくれって、言っちゃったの」
「それって、つまり桜は小町くんに気があるってことなんじゃないの?」鈴は言う。
「うーん」と桜は困った顔をする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます