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「明日香も梓とのこと、占ってもらえば?」茜は言う。
「うっさい」明日香はそう言って、茜を一瞥した。
その日のシフトは店長と木野、それから朝陽と葵というメンバーだった。夜になって、店長が上がり、木野がお店を閉める作業をした。
シフトとしては朝陽が最後まで残り、そして少し前に上がった葵は二人のことを休憩室で待っていた。
三人は一緒にお店を出て、駐車場に移動した。
そこで朝陽と葵は高校生らしい会話をしていた。木野はそんな二人の会話をホットコーヒーを飲みながら黙って聞いていた。
「五十嵐先輩って、すごく綺麗な人ですよね」と葵が言った。
「ありがとう。今度本人にそう伝えておくよ」と笑いながら朝陽は言った。
そんな朝陽の笑顔を見て、木野はこいつ、成長したな、と本当に感心して思った。
木野の時間は、おそらく彼女と出会ったところで、ずっと止まったままだった。それはもしかしたら朝陽も同じだったのかもしれない。朝陽の時間は五十嵐響子という少女と再会し、朝陽本人が行動することで、確実にもう一度、動き始めた。
でも彼女を、薊を見失ったままの木野の時間は今も止まったままだった。
もしかしたら僕の時間はこのままずっと、永遠に止まったままなのかもしれない。そんなことを最近の朝陽を見ると、木野は考えるようになっていた。
ふと葵を見ると、葵はじっと木野の顔を見つめていた。
木野の本音が、どこかから漏れていたのかもしれない。葵は心配そうな顔で木野の顔を見つめていた。木野はそんな葵ににっこりと笑いかけた。
それから三人は駐車場でさよならをして、朝陽と葵は二人で、そして木野は一人で家に帰った。
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