依頼の完了とぶるーでい

第45話 依頼の完了

 僕はラヴさんに報告書の入った茶封筒を手渡した。

 ラヴさんはそれを受け取り、しばし僕を見る。


 依頼主にして見れば何も解決していない、納得いかないかもしれないが、これ以上僕には何も出来ない。


 「・・・ご依頼は。」「でも。」

 「完了しました。」「でも。」

 「ご依頼は、犯人の手掛かりを探す事、でしたね。」「はい。」


 「手掛かりがない時は、諦めて下さいと、予め申し上げました、あっ、遅れましたが、僕は2日間、調査に加わらなかったので、費用を計算し直した差額分、14400まどかは返金します。」


 「ドロシー、用意した分を貰える。」

 「うん、待って、・・・はい。」

 僕はドロシーから封筒と領収書を受け取り、ラヴさんに手渡す。

 ラヴさんは受け取ったが、確認はしない。

 「あの。」


 「ホームズ探偵事務所を紹介します、あそこなら人員も機材も申し分ないですし、明朗めいろう会計です、きっと引き受けてくれます。」

 「こちらで。」


 「そうだ、毛里もうり探偵事務所、僕からホームズさんに頼んで、紹介状書を書いてもらいましょうか、あそこの娘さんは空手有段ゆうだん者ですし、やたらと頭の切れる小学生もいますし。」

 「あの、こちらで受けて。」


 「だったら、明知あけち探偵事務所はどうでしょう、イケメンですよ、それに少年少女探偵団って言うNPO活動もやってますし。」

 「ここで受けて下さい。」


 「お断りします。」「泣きますよ。」

 「どうぞ。」

 「あれ、言いふらしますよ。」

 「いやいやいや、僕、ちゃんと仕事しましたよ。」


 「ねえぇ~、指輪、欲しくない。」

 「ドロシーとルイーズには、いずれちゃんと買います、・・・お金が貯まったら。」


 「ドロシーちゃん、ルイーズちゃん、デート、お金いるよ。」

 なっ、まずい。

 「今のゆたか、ちょっと冷たいかも。」

 「いやっ、ドロシー。」


 「ゆたか、もっと優しい人だと思ってた、ちょっとがっかり。」

 「いやいやいやいやいやっ、ちょっと待ってルイーズ。」


 「いつものゆたかとなんか違う気がする。」

 「そんな事ない、ドロシー。」


 「なんかさぁ、そっけなくて冷たくて、やな感じ。」

 「ルイーズ、違うから。」


 「依頼したいです。」

 「嫌です、ドロシーとルイーズを危険にさらすのは、お断りです。」


 「「ゆたかぁ。」」

 二人が僕の首に腕を回して両側から顔を寄せる。

 そして、耳もとささやく。


 「有難うゆたか、でもね、このままだと、超赤字なの、どうしよう。」

 「やっぱり優しい人、だけど、預金残高が、半減期はんげんきを迎えたんだ。」

 二人共、すっごく優しい顔してるのに、声が怖い。


 「これじゃあ、赤ちゃん産めないよう、しくしく。」

 「あぁ~~~、赤ちゃんは私が立派に育てて見せます、しくしく。」

 なっ、えーーーっ、何でそんな怖い事言うのさ。


 「パパ、現実を見なさい。」

 「パパ、子育てにはお金が要るの。」

 うーーーん。


 「・・・お話を聞かせて下さい、・・・まず聞くだけだから、二人共。」

 「「わ~い、おっかね、おっかねぇ~~~。」」


 お嫁達さんは超現実的だった。

 「ありがとうぉ~~~。」

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