お持ち帰り

第5話 防虫剤の匂い

 「きゃはははあ、くっくっくっ、がははははははあ、うっうっ、ぐるじぃ~。」

 「だあははははははははははあ、ごっ、・・・ごっ、ごっ、めん、ぐっぐっぐっ。」

 「「ぎゃああああはははははははあ」」

 「お腹、なあははははははあ、いだあ~ぃ。」

 「どっ、ドロシ、・・・ぶっ、ぎゃははははあ、ごっ、ごめん、ぶっしゅううっ。」


 「酷い、二人して、好きでこうなってるわけじゃないもん。」

 「ごめん、ドロシー、不意を突かれちゃって、つい、もう、落ち着いた、ぶっ。」

 「ゆたか、ひどいぃー、ルイーズも、どうして毎回そんなに大袈裟おおげさにするの、さっきの飴、返して、せっかく取っといて上げたにっ。」

 「大袈裟おおげさじゃないしぃー、めちゃくちゃ面白いんだもん。」


 まばゆ閃光せんこうと、熱線、熱波がおさまり、ドロシーの福笑ふくわらいの様になった目鼻立ちを目にした僕達は、込み上げる笑いを押さえる事が出来なかった。

 「ぶううううっ。」ドロシーが何気にそっぽを向いた。

 僕はその顔を見てはっとする、とても美しいと思った。

 僕は気付いた、この目鼻の配置は、ピカソの作品の様な、多角的視点から見た造形美なのだと。


 「素晴らしい。」

 「ぎゃははははははっ、ぐっぐっぐっ、ぐるいぃ~、死ぬぅ~。」


 「ルイーズいい加減にして。」

 ぎゅるるる。「はあぁ~っ、笑い過ぎて、お腹すいたあぁ~~~。」

 しかしこれでは『目立つ』と言う問題の解決にはならない。

 この美しさを理解する人は少ないと思う。

 このままでは、ドロシーを傷つける者が、きっと出て来る。

 「ルイーズもういいだろ、それより、何か大きい布を持ってない。」

 「ん、あるわよ、どうするの。」

 ルイーズが幅30cmぐらいの結構長い、真っ黒な布をカバンから出してくれた。


 「ドロシー、この布を顔に巻いてくれないか。」

 ドロシーがうるうるする。

 「違う違う、ドロシーは美しい、とっても可愛い、・・・だからその、他の男に見せたくないんだ。」

 「「えっ。」」えっ、僕、変な事言ったかな。

 「そ~う、そう言う事なら巻いてもいい、かなぁ~。」

 「・・・じゃ、私も可愛いから巻く。」

 「いや、ルイーズは。」睨まれた。


 ルイーズがカバンからもう一枚出してきた、良く入るなあー。

 で、二人共、頭から真っ黒な布を掛け、目だけが少し出るぐらいに布を巻いた。

 ドロシーは服装的にちょっとアンバランスだけど、ルイーズはあの小さいカバンの何処に入っていたのか、真っ黒なセーラー服をだして、上から着こんだ。

 黒い布、黒いセーラー服に黒い靴、ブロンドの髪に青い瞳、とても似合ってる。


 これで家までは大丈夫だと思う。

 「じっ、じゃ行こうか、でもルイーズは男の人を引き付けない。」

 「多分、・・・大丈夫、この服、防虫剤の匂いきついから、ママが無臭のやつ使わないの。」

 「まあ、取り敢えずよかった、その恰好じゃ、お店では食べれないから、先に僕の家に行こう、その後で僕が買い物に出てご飯を買って帰るよ。」

 「分かったわ、ゆたか。」「お腹が空いて歩くのいやー。」

 「僕の家、ここから15分ぐらいだから。」

 「いやー、お腹空いたぁー、歩けないぃーっ、おんぶぅー。」

 「ねえ、ルイーズ、我がまま、そんな事したらまた襲われるから。」

 「大丈夫だもん~、ねぇ~、おんぶぅ~。」


 仕方無いな、もう日が完全に沈んでしまった、特売も気になるし。

 僕はしゃがんだ。「わぁ~いぃ~、うんしょ、温かくてらくちぃ~ん。」

 「はいはい、しっかり摑まっててね。」「ううううんもうっ。」

 おー、女の子の生太もも、すべすべしてる。

 「こらー、さわさわするなー。」「はい、御免なさい。」「もうーーーーーっ。」

 しっかし、防虫剤の匂いすっごいなあー、これは虫付かないわー。

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