神様たちと人間達
五月雨
山神様と1匹犬
今日、私あけびは親に内緒で当たり宝くじで山を買いました。
内緒と言うより、両親が離婚してどっちにもついて行きたくなくて
「自由に生きれば、私この宝くじで家買うし。」
この一言がこう、なんて言うんだっけ?有言実行?された訳だ。
まぁ、その山というのも訳アリにはいるんだけどね。
26年くらい放置された神社、大木のお世話をしなければならない。
しかもその山に入るのに特別な儀式がいるらしい。
この白装束とかホント漫画でしか見た事ないよ。
えっと今回儀式を行うのは買った山の隣の森の中に住むこの手のことに詳しい私よりは年上な人。
確か名前は山吹さん
「おーい、あけびちゃんそろそろいいかな?」
「あ、はい。今行きます」
山への入口、と言うより参道と言った方がいいのかな?
そこを歩いて鳥居へ向かう。
「しかし大きな買い物したねぇあけびちゃんまだ高校生でしょ?」
「いやぁ、親に離婚するとか言われてどちらかについて行くにも荷物になるなら行かない方がいいかなーと思いましてー」
「根性あるねー」
そんなたわいもない話をしているともう鳥居だ。
「ここからは、僕がいいと言うまで言葉を話してはいけないよ。いいね」
あか、かったのかな、この鳥居は…
鳥居をくぐるとひたすら長い階段だった。
山吹さんはいつの間にか顔を紙で隠していた
夜の匂いと虫の鳴き声が自分の胸を早くさせた。
もう30分ほどたっただろうか。
やっと長い階段を登り切った。
「ここからは話していいよ。あともうちょいだ、頑張ろう。」
「はい。」
山の上は少し寒かった。
山吹さんの指導の元清めの儀式から始まった。
冷えたからだに冷えた水ほどの地獄はない。
次に内部の浄化のために苦い草を食べた。
「それじゃあ本格的な方の儀式をするよ。あー、年頃の女の子に言うのもあれだけどとりあえず服脱いで。」
「は、はははははい。」
でもこれを脱いだら全裸になってしまう。
仕方ないけど恥ずかしい
「脱ぎ、ました。」
「じゃあここに寝っ転がって」
ゴツゴツした岩の上で寝っ転がった
「…うん。いい子だね。それじゃあちょっとごめんね」
山吹さん?
と言おうとした時、首筋に激痛が
「んぁ!痛い!」
「ごめんごめん。でもこれで終了だよ。」
痛みの元を触ると指に血がついていた。
「でもここまですんなり終わらせるなんてすごいね。前の子達なんか逃げ出してしまったのに。」
「……?」
白装束を羽織りなおすと山吹さんは優しく微笑んだ。
「ようこそあけび、僕の山に。」
「えっ?」
山吹さんは顔を隠していた紙を外した
「僕は今、君を閉じ込める儀式をやったのさ。ずっと欲しかったんだ。君みたいな人間の女の子が。」
「えっとつまり?」
「神隠し成功、やったね。」
先程までの山吹さんにはとても思えなかった。
「僕はこの山の山神、この神社の宿り主。」
妖艶な笑みを浮かべこちらに歩みよってきた。
「優しくするから、泣かないで。この山も歓迎してるよ。そうだ、お腹すいてないか?これを一緒に食べよう?」
そうだされたのは、私と同じなのあけびだった。
「もう、逃げられもしないんだから、ね。」
「神隠しに合うから買ったんだよねこの山。」
「え?」
「私、両親にも良くしてもらえなかったから、ずっと楽に消えたいと思ってたの。この山、かってよかったー!」
山吹さんは唖然とした顔でこちらを見た。
「つまり僕らの願いは誰も悲しまないってこと?」
「うん。」
山神様は嬉しそうに私を連れて本殿へ帰った。
神様たちと人間達 五月雨 @MaizakuraINARI
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