短編集

@rigoo00

雨が降る日

色は灰色だった。

鼻から匂いではなく、湿った空気を感じながら、私は地面を見下ろした。

ぽつりぽつりと、コンクリートは深い色に染まっていく。

次々にすれ違う人たちが傘を広げていき、街の風景は一瞬で変わっていく。


上を向けば、目に入りそうで入らない、水滴がぽつり、ぽつり。

煩わしさと、冷たさと、体も深く深く染まっていく。

どこまでも、水滴が地面に当たる音が広がっていく。

全部溶けていってしまうような、けだるい安寧を感じながら、

私も傘をさして、街の一部に溶けていく。

なんてことはない、私もただの凡人だったというだけよ。

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