写真の中の自分

勝利だギューちゃん

第1話

私は、自分の部屋に写真を飾っている。

自分の写真だ。

最近の写真ではない。

まだ、20代頃の、若かりし日の写真だ。


この頃は、お金はなかった。

毎日を食いつなぐのに必死だった。

でも、未来は希望に満ちていた。


「いつか大物になる」


それを、自分に言い聞かせて、頑張ってきた。

そして今では、名の知れた画家となった。


それなりの財も手に入れた。


だが独身だ。子供もいない。


写真の中の自分は若い。

そして、生き生きしている。


でも、今の自分はどうだ・・・

鏡を見ると、当たり前だが老けている。


何かに行き詰った時、写真をみる。

「初心忘れるべからず」ではないが、いつまでもあの頃の気持ちを忘れない。

そう願っている。


ただ、自分の写真の中には、もうひとりの人物がいる。

おそらくは、私と同年代の女性だろう。

私と同年代ということは、今は60近いおばあさんだ。


名前は知らない。

たまにやってきて話をした・・・

その程度の関係だった。


「今頃は、もうお孫さんがいるのか」

そう思うと感慨深い。

今更、会おうとは思わない。

ただ、元気でいてくれていることを祈る。


「私の事を覚えていてくれてるか?」

それだけは気になっていいた。


写真の中の私は、野球が好きだった。

もっとも、運動は苦手なので、観戦専門だった。


お金はなかったので、野球場には行けない。

なので、テレビで観戦していた。

テレビは、もらったものだ。


当時、某球団のファンで、常に帽子をかぶり、

レプリカユニホームを着ていた。


そして、テレビの前で応援していた。

写真はその姿をしている。


その球団は・・・もうない・・・


「久しぶりに着てみるか」

倉庫から帽子とユニホームを出した。


ユニホームは問題なく着れた。

でも、帽子は小さくなって、ぴちぴちだった。

もう、色褪せているが、そこがよかった。


応援歌は覚えている。

私は熱唱した。


「そういえば、あの子も好きだったな」

その事を思い出した。


その時、玄関のベルがなった。

「しまった。苦情か?」


おそるおそるドアを開けた。

するとそこには、初老の女性がいた。


(見た事あるような・・・)


すると女性は口を開いた。

「相変わらずだね」

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写真の中の自分 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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