23
「大阪来ました、
二学期が始まった。
生徒会長をしていた頼子が学校を辞めて結婚、ロンドンに行った事は、夏休み明けの校内で大ニュースとなった。
まるで、その頼子と引き換えのように、一人の転校生がやって来た。
…関西弁だなんて…
浅井君に罪はないけど、今のあたしにはキツイ。
音楽屋で真音と女の人のキスシーンを目の当たりにして、あたしは…表通りを通るのも、公園に近付くのもやめた。
真音からは…連絡もない。
暗い気持ちで残りの夏休みを過ごして…頼子のいない二学期を迎えた。
「センセ、ここ、軽音部ありますのん?」
「え?軽音部…は、ないなあ」
「はっ?そら大問題やな…」
「いいから席につけ。窓際の後ろから三番目だ」
「ういーっす」
…耳に入る関西弁に、つい…うつむいてしまう。
今は真音の事、考えたくないよ…
「おい、るー」
ホームルームが終わって、後ろの席にいる宇野君に声をかけられる。
「何?」
「Deep Red、メジャーデビューって本当?」
…メジャーデビュー…?
「マノンから聞いてねーの?」
「……」
つい、食いしばってしまった。
そっか…デビューするんだ…
それで連絡もないのかな…
「何…もしかして、ケンカ?」
「…ケンカより、ひどいかも…」
「えっ…そ…そうなんだ…」
デビューなんてしたら…遠い人になっちゃうな。
頼子がいなくなって、ダメな子になったと思われるのは辛い。
あたしは、頼子に『自分磨き』を怠らない約束をした。
悲しんだり落ち込んだりしてる場合じゃないのに…
放課後になって、珍しく宇野君がクラブに。
瀬崎君は当然クラブに。
あたしは少し遠回りして本屋にでも行こうと思って、カバンを持った。
「あんた、武城さん?」
教室を出ようとした所で声をかけられる。
「…はい?」
振り向くと、転校生の浅井君。
「へ~。あんたがね」
浅井君は、ジロジロとあたしを見てる。
……気分悪い。
「マノンの彼女なんやってな」
「え?」
「マノンに聞いた」
「知り…合い?」
「幼馴染。俺、先週家族でこっち引っ越して来てん。早速会いに行ったら、日野原には彼女がおるって」
「……」
…先週…
それって…あのキスより…後…だよね…
「なあ、マノン、音楽屋ってとこでバイトしてるんやて?連れてってぇな」
「お…表通りの目立つ所にあるから。あたしは今日は用事が…」
「ええ~?なら明日でもええから」
「…宇野君ていう人に頼んで。じゃ」
冷たいあたし。
心の中で浅井君に謝る。
だって仕方ない。
…今は真音に会いたくない。
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