英国寄宿学校余話

enaga

0.英国寄宿学校からご挨拶

 はじめまして。僕はかのう あきら。十六歳。

 イングランドの某パブリックスクールに在籍している。

 学校の名は……とりあえずAコレッジと呼ばせてもらおう。


 Aコレッジはとても古い歴史と伝統を誇る学校で、男女共学が増えたパブリックスクールの中では少数派になりつつある、男子のみの全寮制寄宿学校だ。

 この学校が開校したのは、日本で言うと室町時代。あのややこしい応仁の乱があった頃にできたと言えば、どのくらい長い歴史を持つ学校かわかってもらえると思う。


 歴史が古いということは、建物も古いということだ。

 いくつも尖塔が突き出たゴシック様式の校舎は、日本人から見ると学舎というよりファンタジー映画に出てくる城のよう。実際、校内のあちこちが有名映画の撮影に使われているし、とにかくどこを切り取っても絵になる。

 でも歴史的建築物って、いいことばかりじゃない。修理が必要な箇所だらけだし、とにかく寒いし。


 で、ここからが本題なのだが。

 古い場所は、やっぱり……出る。いろいろと。


 英国にも怖いもの好きはたくさんいて、幽霊が出るフラットを好んで借りる人も珍しくない。日本だと心理的瑕疵かし物件というやつで嫌がられると思うんだけど、それを面白がる人もいるようだ。

 まあ、怖さに対する感性というのは国や人によって変わるのだろうけれど。学友たちにも、怖いのは嫌だって奴も普通にいるし、やたら面白がる奴もいる。

 

 とにかく、古いところだから、怪談や不思議な言い伝えはたくさんある。僕自身も色々経験した。

 その中から少しだけ、話してみようと思う。

 あなたも、あなたの横から覗き込んでるその人と、一緒に聞いてくれるかな?

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