転生者に復讐を

菜ノ風木

I want to take revenge on you.


「王歴1230年_____」


  悪名高き、国王の側女が処刑された。

  罪名は王妃暗殺を企て、国王の殺害未遂。処分は、一族破門と爵位の剥奪、及び一族皆殺しという令。

  一族らは無実を訴えた続けたが、その声が王に届くことはなく死んでいった。

  己の手を持って、自害という形で。

  そして、六月。土砂降りの雨の中、彼女が断頭台の上に処された。国民は王族の死を見に、喜びの声を上げながらニタニタと集まる。「殺せ!殺せ!」と手を挙げる様は、飢えた野獣だ。

  人の死を喜ぶ彼等は冷淡な国王と同じで、彼もまた側女を見つめニヤニヤと笑う。しまいには高笑いを始め、その隣には王にもたれかかる王妃が扇子で顔を隠していた。不安そうな顔をしているが、ただ単に人の死を見たことがない、と言う顔だ。

 

「おぉ、見ろ!出てきたぞ!!」


  兵士と共に、断頭台にボロボロの服を着た側女が上がった。彼等は側女を断頭台に叩き付け、降りていく。あれほど美しかった髪はバッサリと切られ、目にはクマが現れていた。けれどその面立ちは凛とし、これから死ぬ人とは思えない。

  彼女は再び立ち上がり、空に顔を向けた。

  美しい顔に、雨粒が頬を伝う。

  じわりと、縄で縛られた手からは血が滲み、断頭台に染みた。そして血を踏みつけ、執行官が姿を見せる。手には書状を携え、彼もまた兵士達と同じくニタニタ顔を堪えていた。


「罪名。国王妃様暗殺計画、並びに国王陛下殺人未遂の企て。従って、打ち首の刑に処す!」


  執行官が罪名を読み上げると、ますます人々は表情を広げた。まるで、お祭りだ。


「うぉぉぉぉぉーーーー!!!」


  声高らかに雄叫びは響き、辺り一面に反響した。雨粒の音は、彼等に何の意味も持たせない。

  執行官は身なりを整え、勢いよく手を振り上げる。

  ポツポツと時が止まるように、雨の音が鈴音に聞こえた。音はこんなに綺麗なのに、人の声は汚物で腐り果てていて、雨音はさらに感情を高ぶらせた。

  美しい音色とは裏腹に、雨は激しく大地を叩きつける。

  振り落とした手は、さらに国民を高ぶらせた。


「執行!!」


  もう、雨音は聞こえない。あの日は、過ぎて行った。目まぐるしい時の中、人々は彼女を忘れる。


  そして、彼女は笑い。そして、いなくなった。


  ある人は言った。













【 私は知りたい。なぜ、貴方が断頭台の上で笑ったのかと____ 】








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