第32話 煙に巻かれた街

 土地のガイドの話だと、ここは常に煙に巻かれた街だという。


「真っ白だな」


 どこから漂ってくるのか、白い煙が路地という路地に立ち込め、十歩も歩けば今居た場所もわからない。前を行くガイドの背中に張り付くようにして進む。

 しかしどうにも同じ所を回っているように思えてガイドに訊ねた。


「どこへ着くのかね?」


 するとガイドはとても真面目な顔で答えた。


「歩いた先に着きます。人は皆そうして生きているのです」


 煙に巻かれた。

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