第15話 壁

 土地のガイドの話だと、この壁のむこうに楽園があるという。


「高いな」


「千スツォリあると言います」


 見上げる壁は雲の上まで続いている。スツォリとは人が一日に歩く平均的な旅程である。人が千日歩く高さとは相当なものだ。

 この絶壁の所々に人の姿がある。彼らは壁を身体ひとつで登っている。


「楽園を目指す人々です」


 壁から人が落ちた。


「命懸けだな」


「登りますか?」


 ガイドが聞く。

 ただの旅行者に過ぎない私は首を横に振った。

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