【幼馴染の過去改変はハッピーエンドで終われるか!?】

久久泉

1章

プロローグ

 あなたは運命というものを信じるでしょうか?


 天才理論物理学者、アルベルト・アインシュタインは『神はサイコロを振らない』という有名な言葉を使って、量子力学の不確定性原理を否定した。


 例えば目の前にひとつのサイコロがあり、何気なく振って出た目は……。

 時間をさかのぼってもう一度振ったならば、同じ目が出るのかどうか?

 更には、最初とは違った動作で振ったならば、違った目が出ていただろうか?

 そもそも、違う動作で振ったと思っていたその動作は、実はすでに決定されていて

 本当は一切変化などできていなかったのかもしれない。


 そんな小さな結果の連続が過去となり、積み重なりが未来をつくるなら……。

 それは運命と言えるのかもしれない……。



Ⅰ.


 眼底に痛みがともなうほどのまばゆい光が緩やかに終息していく……。


 瞬きを何度も繰り返して、涙目にもようやく視力が回復する。


 ――どうなったんだ?


 目にはいった情報を認識すれば、そこは照明は点いていないものの、明るく見慣れた理科準備室にいた。


 ブレザーの制服のポケットには、スマホケータイの存在感がある。それを手に取って、おそるおそる画面を確認すると、……六月二日・十四時三十分。


 ――何も変わってない……。


 次に、室内の壁掛け時計に目を移すと、その針は十五時を指し示していた。


「…………?」


 それは時間にズレが生じていることの証拠だった。


「問題はこの時間が元の時間軸より過去なのか、未来なのか?」


 そこにある日めくりカレンダーで現在の日にちを確かめる。


 …………!


 同じ年の『』という数字が、大きく記されていた。


「ここは過去!? なのか……」


 元の時間からおよそ三日前に過ぎ去った世界が、再現されたことになっているようだった。


「やった! 過去の世界に移行できた……」


 過去ならば、これから起こることが予測できる。


 失踪したままになっている幼馴染のを救うため、いては宇宙の崩壊を阻止するために行動しなければならない。


 だが、ここからの失敗は絶対に許されない。この世界での行動は全て記録として残り、失敗は未来で取り返しのつかない結果を生むことになる……。



 何故、そんな大それた事件が起きてしまっているのか。事の顛末を知るには順序立てて、つぶさに明らかにしなければ時間の仕組みには辿り着けない。


 思い返せば、発端は数日前の取り留めのない会話から始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る