タイム&マジック

垣崎 史郎

第1話 出会いとコンビニ弁当

 夕暮れがきれいな午後5時頃。某駅前。学校が終わった俺はコンビニに向かっていた。今日、というかほぼ毎日親は仕事だか何だかで不在のため、コンビニで夕食用の弁当を買うのは毎日の習慣になっている。そして歩きながら一日を振り返るのも、その習慣のひとつである。そこで俺は毎日同じ愚痴をこぼすのだ。

 なんて理不尽な世界なんだ。

「あの、すみません。」

 いや、俺がおかしいのか。

「少しだけでいいですからお話を、」

 魔法使えないってなぁ。

「ねぇ、ちょっと、」

 でも大器晩成とか言うし、

「おい、」

 いつか時間を操る魔法なんかが......なんて

「いい加減に、」

 いやー夢が広がりまs

「しろおおぉぉっ!!」

「っと危ないっ。」

 危機一髪。魔法が使えない代わりに危機回避能力は無駄に高い。危うく某アンパン人間になっちゃうところだったぞ。もう攻撃がないことを確認し、後ろを振り向くと、物凄い形相でこちらを睨むショートヘアの女子高生がいた。

「気づいてんじゃん!」 

 いや気づいてなかったらどうするつもりだったのこの人。

「どちら様でしょうか。」

「とぼけないで。蒔田明里ときたあかりよ。さっき話したばかりじゃない......。」

「あぁ、さっきの頭おか......不思議な美少女か。」

「言い換えても遅いわっ!」

 瞬間、横腹に回し蹴りをくらう。どれくらいなのか受けてみようと思った自分を恨みたい。普通に痛い。本当すぐに足が出るなこの子。暴力反対。

「で、何の用です?」

「言ったわよね。死にたくないのなら、私に協力しなさいって。」

「いや協力する気はなくもないんですよ。ただね、この5分にも満たないコミュニケーションで僕の本能さんが気づいちゃったんですよ。......あなたといると、いずれ死ぬって。」

 この俺もまだ死にたくはない。あと、さすがに実の息子が死んでしまったら両親も悲しむだろう。それが殺されたと知ったら暴走しちゃうかも。というかされたら困る。とにかくはやいとこ逃げよう。

「なに物騒な想像してんのよ。」

「あ、忘れてた。あの弁当数量限定だからなー。すみません、いま少し急いでいまして。またいつか会いましょうね。」


 ......二度と会いたくない。


******************

 

 女子高生と別れてから少し歩くと、無事にコンビニに着き、早速お気に入り弁当の捜索を開始した。しかし残念なことに売り切れ。仕方なく別の弁当を買うことを決め、会計をしようとしたとき、ポケットが妙に軽いことに気づいた。


 あー、終わったー。


「おとなしく帰りますか......。」

 弁当を棚に戻し、諦めて店を出たその直後

「ちょっと待ちなさい。」

 そうかそうか。彼女は自分から殺しに来るのね。察し。こういう時「気配遮断」インフォレストとか「空間転移」トランスポートとか使えれば便利なんだろうなぁ。

「ごめんなさい。僕が悪かったです。許してください。」

「なに急に謝ってるのよ。......ほらこれ。」

 すると彼女はコンビニの袋を差し出した。

「......ごみ捨てで見逃してくれるんですか?」

「違うわよ。中を見なさい。それが食べたかったんでしょ。」

 いわれた通り中を見てみると、

「数量限定スタミナ焼肉弁当......。これを僕に?」

 彼女はこくりと頷いた。

 俺は何か勘違いをしていたらしい。やっぱり人は見た目によらないというか、行動によらないというか。でもなんで知ってんだ?まあ、とにかくありがたい。

 「ありがとうございます!」

 

 きっと、一日がひどすぎたあまり、これだけのことで舞い上がってしまっていたのだろう。


「何かお礼をさせてください!なんでもいいですよ!」


 もう手遅れだ。


「それじゃあ、私に協力してもらうわ。」

 

 これが謎の美少女・蒔田明里と、俺・氷月澪ひづきれいの出会いである。

 


 

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