未来型二次元ゲームIDEA

はやしばら

序章:未来からの映像手紙


序章:未来からの映像手紙


 まじめに受験勉強をしていることが気に喰わない奴がいた。

「お前、クラスで勉強なんかしてんじゃね」

 あの日、イジメの発端ほったんとなるセリフはこうだったかもしれない。


 かえで なぎの教科書は、まわりを囲む友人?たちに取られていく。

 まるで、アマゾンに落ちた血の通う生き物を喰らうピラニアのように、凪の席には同級生たちが集結した。


「カエデ? 自覚したほうがいいこと、まとめといたから読んでね」

 このクラスをまとめていた中心人物がそういうと、いっせいに笑い声がした。ひとり以外はみんな笑顔だった。

 ノートには、なんて書かれていただろうか?

 それは、当の本人にしか判らない。


 そう―――

 ボクが想像する未来は、もっと明るいモノだった。

 空に車が飛んでいたり、宇宙旅行といった話題が浮かぶのが何百年前の架空話だと考えると、世間がどれだけ未来に希望を持てなくなったのか想像することができる。

 その第一の理由に、世間がこのような絵空事はアニメや漫画、ゲームの世界だけと知ってしまったからだ。


 もしもだ、

 魔法や世界を変える発明さえあれば、こんな社会で起きる陳腐な争い、イザコザ、ヘタしたら世界平和だって楽に手に入れることができるかもしれない。


 だけど、現実はそうはいかない。

 女の子ひとり救えない世界で、ボクはずっと心から叫んでいた。世間が無秩序に反映するにつれて言葉は個人的になり、心を言葉にすることがヘタになっていく。

 とある病室でビデオカメラを構えながら―――ボクに、こんなことが反芻されていた。

 でも、それらは笑いに変わる。

 過去を変えることなんて考える前に―――ボクらにはもっと大事なことがあると、知っていいたからかもしれない。


**フォルダー名:世界初のゲーム世界の出身者(金髪幼女)

 偽物の世界で、ほんとうの愛を探していた。

 みえない赤い糸だとか、夢だとか―――大事なことが見当たらない世界で、わたしはわたしを愛してくれるヒトを探していた。家族が、ずっと欲しかったんです。


**フォルダー名:少女A(被害者)

教室からアタイは飛び落ちた。この世から消えたかった。未来に絶望して――大事なヒトに裏切られて。

だけど、後悔したんだ。

好きなヒトといれない未来を恨んだ。大好きなおにいの涙に、心が張り裂けそうだった。

 どうか―――アタイみたいな子たちが少しでも減る未来を、アタイは信じたいです。


**フォルダー名:未来のプロスポーツ選手(仮)

 ん……ビデオ写っているか? いい?といっても、私が出演していいのかい? 遠い未来に、日本代表のプロバスケット選手になる私が―――って、オサムくん? 判っているとおもうけど、私は夢を諦めてないからなッ‼

 銭形や深町がなんていおうとも、この手で未来をつかんでみせるッ! 

 過去でも、未来でも………叶えたいことは絶対、全力で手に入れるべきだろ?


**フォルダー名:ゲーム依存者(親)

 家族を捨てて、今まで生きてきた。

 だけど、本当に愛した誰かを忘れることなんてできない。いまだってずっとそばにいたいんだ。

 愛している。俺は、ずっと見守って……あああああああああッ‼ 

『コレ……なんの布の匂いを嗅いでるんだ?』

 アカリちゃんの昨日のお洋服だ。預かって――――おいヤメろッ‼ ナニをするッ‼


**フォルダー名:プログラマー兼、企画立案者

過去を生きる諸君、コレだけは守ってほしい。

大事なヒトを愛してくれ。『IDEA』という異国の言葉には、その思いが含まれている。

最後に………もしスベテが間違えだとしても、親友や家族、恋人――誰かを思う気持ちを忘れないでくれたまえ。

そして、この映像ビデオ手紙レターが……未来からの最後の贈り物になることを切に願う。


 ちなみに、未だに過去へと遡行することのできるタイムマシンはできていない。

結局ボクらは……ただこんな未来に憧れていただけ。 大切なヒトが隣にいる未来を―――繋げたかった。それだけだ。

さて、ボクはなにを語るべきか。


おそらくなにも、ただの未来出身クソゲーマーが愛だの夢だの―――今から訪れる未来について絞り出しても、世界は梃子てこでも動かすことはできないだろうけどな。





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