#3-1 彼女も監督たちと同類だった

「皆、久しぶりだな」


 一人の男が周りに声を掛ける。部屋の中央に位置する所にある円卓に7人が腰掛ける。


 4人は王、2人は冒険者、1人はギルドの長。


 ここにいる者たちは『七英傑』と呼ばれている者たちだ。


 その代表でもあるライオが笑顔で仲間たちを見る。一同が揃ったのは十年振りであった。


 「おいおい、老け込んでるじゃねーか皆さん。政治なんかしてるからだぜ」

 

 緑の外套を着た男が楽しそうに言った。それに賛同するように何人かは「当たり前だ」や「失礼よ」と笑った。


 「あなたたちもそろそろ現役を引退したらどう? もう体がついて行かないでしょう」

 「まだこの目で見ていないものがあるからな。後十年は続ける」


 談笑が続いていると、一人の男が会話に切り込んだ。


 「俺は昔話をしに来た訳ではない」


 七英傑の中で最も大きな男、ゴアが腕を組みながら言う。


 「『救世主』を各々呼んだであろう。その報告こそが今回の目的であろうに」

 「相変わらず固いな。まぁでもゴアの言う通りか。それじゃあまず俺から」


 緑の外套を着た男が立ち上がり、会議を進めだした。


 「俺のところは男が来た! ギフトは上々! つまり成功したぜ!!」


 腕を振り上げやり切ったと男は言った。そしてゴアの機嫌を下げないようにすぐに

次に繋げる。二番目に立ち上がったの青いローブを着た女性だった。


 「私も成功。これから訓練していく」


 三番目は4人の王の一人であるハレンが立ち上がる。


 「こっちも問題無しよ。聡明な救世主だわ」

 

 四番目は4人の王の一人、アニエが立つ。


 「こちらも何も問題はない。これからが楽しみだ」


 五番目は4人の王の一人、ゴアが立つ。


 「我も言うことはない。あれは強者だ」


 六番目は4人の王の一人であり、この代表であるライオが立つ。


 「私も問題はない。強いて言えば元気があり過ぎるな」


 笑いながらライオは皆に報告をした。そして最後に残った男が立ち上がった。ここまでくれば全員が同じ結果となったも同然、そう6人は思った。しかし現実は違った。


 「申し訳ないが失敗した」 


 その言葉を聞き一同が驚きの声を上げる。7人目に報告した男は現在全ギルドを統括するものであり、7人の中でも群を抜いて様々な知識を持っていた。だからだろう、こいつが失敗するなどあり得ないと皆が思っていたのだ。


 「何があった」

 「分からない……だが推測するに負けたのだと思う」

 「負けたって……ラス、何に負けたのよ。あんなに入念に準備してたじゃない」

 「ああ、そうだとも。でもね、駄目だったんだ」

   

 悔しい素振りは一切見せず、むしろどこか清々しさを感じさせる表情をギルドの長であるラスはしていた。しかしその表情に納得がいかない者がいた。椅子を押しのけ、ラスに向かって歩いていき、胸倉を掴む。


 「貴様何故その様な表情をする!! 我等英傑が負けてどうするというのだ!!」

 「ゴア!!」 


 皆がゴアを抑えようと走り寄ろうとした時、ラスが手を挙げた。


 「ゴア、君の言っていることは正しい。英傑は負けてはいけない。その通りだ……でもね、僕たちは自惚れていたのかもしれない」


 英雄の中の英雄……人々は彼らを英傑と称え、国々から最強と言われてきた者たち。自分たちに並ぶのは同じ英傑のみだ、そう心の中で思ってしまっていた。そうラスは打ち明けたのだ。


 「僕たちより強いのはね、いるよ」

 「っ!? それが救世主ではないのか!?」 

 「違うよ。もっと間近にいるじゃないか。僕たちサピエンスが何百何千年と戦ってきた」


 答えを出さずにあえて遠回しに言った。それは少しでも皆の認識を正しくさせるためだった。考えろと。この世界の脅威を。


 そしてポツリと誰かが言った。


 「『レギオン』……?」

 「そうだ。でもそこの枠に入らない。なんせ奴等は…」


 ―――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る