第10話 ラミアーユ氏の屋敷で
宿屋から歩いて数分──…町の南に位置する場所にラミアーユ氏の屋敷があった。ハーティアの屋敷とほぼ同じく、程よい装飾が施され厳かな雰囲気を持った、見上げるほどの大きな門構えが目の前に現れる。ラテュルがベルを鳴らすと、すぐに出迎えの召使いが屋敷から歩いてきた。
「ハーティア家のラテュル様とリディル様ですね」
「はい、そうです。ラミアーユ様にお話があって参りました」
「はるばるご苦労様です。では…」
そう言って召使いは、フィーズを見るなり動きを止め困惑する。
「えっと…そちらの方は…?」
「あ、こちらはフィーズさんで…」
「お二人に雇われた用心棒です」
「はっ?」
「えっ?」
ラテュルの言葉を遮り、突然ありもしないことを口にし出したフィーズ。当然、リディルとラテュルは驚き、彼の方へ視線を向ける。しかしラテュルはすぐに状況を飲み込み、話を進めた。
「そうなんです。私たちが彼にお願いして、ここまで護衛してくださった方なんですよ」
「そうでしたか…大変失礼致しました。では皆様、こちらへどうぞ。ご主人様のお部屋までご案内致します」
召使いは快く受け入れ、三人を案内していく。あまり豪勢とは言い難いが、とても広い屋敷内は、町並みと同じ温かみが感じられる、素朴な雰囲気だった。そして奥の部屋の前まで着くと、召使いは扉をノックし、リディルたちに道を開けた。
「どうぞお入りください。ご主人様がお待ちです」
召使いに促され、三人は部屋へ入っていく。部屋の奥では、リディルたちとさほど歳の差が無いであろう若い男性が一人立っていた。温和そうなその男性は、三人が入ってきたことを確認すると、柔らかい笑みで迎え入れた。
「お待ちしておりました、ラテュル様にリディル様。私がミサ=ラミアの現領主、ツグマ・ラミアーユです」
ツグマと名乗る男性は、自己紹介をすると深く一礼した。それに応え、ラテュルが一歩前へ歩み出る。
「ハーティアの長女・ラテュルと、こちら妹のリディルです。お会いするのは初めてでしたね、ツグマ様。領主を継がれたことは兼ねてから伺っております」
「ありがとうございます。お二人も、ここに来られるまで長かったでしょう。どうぞ、そちらのソファにお掛けください…それと、そちらの方は…?」
先ほどの召使いと同様に、ツグマもフィーズを見て動きを止める。当の彼は、ソファに座らず姉妹の傍らで姿勢良く立っていた。そしてツグマの疑問に、静かに応えた。
「申し遅れました。お二人に用心棒として雇っていただいているフィーズと言います。お"初"にお目にかかります、ツグマ様」
「"フィーズ"…?」
その名前に、更に疑問を抱くツグマ。何か引っかかる、と言いたげな表情をしている。反対にフィーズは、そんなツグマの様子にも動じず、薄い笑みを浮かべたまま、じっと待っていた。
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