第33話 創造された部屋と発明家の女
「? どうしたの、セーラ」
「ふふ〜♪ 先輩にまたお会いできて嬉しいなって思って!」
「え…っ」
「へっ?……あ! いや、今のはそのっ! 変な意味じゃなくて…!!」
急に頬を染め黙り込む二人。それを見ていたキミーは、まるで我が子を見守るような目でしみじみと呟いた。
「いや〜…青春だねぇ…」
「あんたはもっと緊張感を持ってください」
「手厳しいなぁ…アールくんは…」
アールに鋭くツッコまれ、肩を落とすキミー。
そんな中、突然マーベラの花盤がインカム型に展開された。急いで応答する彼。
「…完成したか!?」
『ごめん~! 思った以上に時間かかっちゃって…! もう少し待っては…くれないよねぇ?』
通話口から聞こえるのは女性の声。聞いている限り、ずいぶんとマイペースな性格のようだ。顔の見えない相手とは裏腹に、マーベラは必至の形相で訴える。
「もうさすがに限界だ! ほんの少しでも時間稼ぎができればいいんだ。 途中段階でも使えないのか?」
『途中段階だと全くの使い物にならないよ~…後30分ほどもらえれば…』
「そんなに待っていられるか!」
『ですよねぇ…うーん…じゃあ、せめて10分! これで何とかするわ!』
「…わかった、10分で頼むぞ」
『ラジャー!』
マーベラが切るより先に通話が切れ、花盤は水晶の中へ勝手に収納された。通話していた本人はというと、どっと疲れが出てきたようで、首をうなだれ、深く肩を落としていた。ヘラスが、若干眉をひそめながら声をかけた。
「"アレ"、まだ完成しないって?」
「残り10分で何とかするって言ってたが…」
「後からいろいろアレンジしたりするの好きだからなぁ…あの人は…」
「今の相手も
「あぁ、もちろん。司令官のお墨付きの発明家だ」
「女性で発明家…どこかで聞いたことが…」
「そりゃあ、花盤や大花盤の開発者だからな」
「…"クラッシー・フィルベーザ"か?」
「さすがアール。ご名答」
「あの凄腕発明家が味方にいるとは心強いねぇ…それで彼女は、今度は一体何を作ろうとしているんだい?」
嬉々としてキミーが訊いた。しかしマーベラとヘラスは表情を曇らせる。
「それは…まだ話せません。この部屋も完全なものじゃないから、いつ俺らの会話が外部に漏れるかわからないんです」
「そっか…それじゃあ残念だ」
キミーは眉を下げ笑った。その後にアールがマーベラに質問を投げる。
「…そういえば、この部屋は誰が創造したんだ?」
「あぁ、ここは俺らとクラッシーの四人で造ったんだ。発明家直々の設計だから、そんなに悪くないだろ?」
「なるほどな…それで任意の人間にしか部屋の存在がわからないってことか…」
「その通り。ただ、時間経過までは手を付けられなくてな…そのせいもあって、あまり長い時間居られないんだ。あいつを待たせたらどうなることか…」
「じゃあ俺がこの部屋の時間経過を早めておく」
「マージでー!助かるわ〜さすがエリート…って、えぇええぇえええ!? 今何つった!?」
「いや、その時間経過変えるくらいなら、俺がやるって」
「お前…かなり高度な術なんだぞ…それをそんなサラッと…」
マーベラが愕然としている中、アールは何も言わず、平然として手早く術を施していった。
「…こんなもんか?」
「おまっ…お前…元々すごいとは思っていたけど…」
「見せつけてくんなよこのヤロー! 敗北感しか無ぇよ!」
言葉を失っているマーベラを継いで、ヘラスが叫んだ。すると丁度その時、新たに部屋に入ってくる人物がいた。
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