ドールの旅〜愛されるのも悪くない〜
子羊
旅立ちに向けて
プロローグ 始まりと終わり
――炎だ。
大好きだった村が炎に飲み込まれていた。私はその光景を目の前に、動くことさえ忘れてしまった。
私は手を伸ばしたまま、ただ一点を見つめ続けた。私の手を振り切っていなくなってしまった大切な人を頭に思い浮かべる。
「……これからどうするのよ」
知らない、そんなのどうでもいい。
「あはははははっ、あひゃあははは」
どこかで聞いたことのある、無邪気な笑い声が遠くから聞こえる。
その笑い声を聞いていたら、視界がボヤけ始めた。
「うあ……なんで、ああっ……うわああああ」
なぜか涙は出なかった。ただ絶叫だけが辺りに響き渡っていた。今、起こっていることが頭で理解できているはずなのに、思考がかき混ぜられたようにぐちゃぐちゃになっていく。
このまま私も一緒に死ねたなら。
きっと隣にいるそいつが死ぬことを許さないだろう。私はこれから何の為に生きるのか。
私の手を振り切って、炎の中飛び込んでいってしまった大切な人を思い浮かべた。
コツリコツリ
私の後ろの方から足音が聞こえる。コツリコツリとまるで石の上を歩いているような音に聞こえる。
きっとその足音は、死神が迎えにきてくれたのだ。
死神なら私を殺してくれる。
私の背後でピタリと止まった死神に、私は勇気を出して振り返ってこう言った。
「あ、あなたは死神ですか?」
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