アイドル男子

ワラシ モカ

第1話 幼馴染がこじれていた件

「野球部の皆さんありがとうございました、次からは有志の同好会の紹介になります」

 体育館に集まった一年生たちはオリエンテーションという名の部活動紹介を延々と見せられていた。もうかれこれ一時間以上は見ていて、飽きている人は隣の人とおしゃべりに興じている。そりゃバトミントンやバレーボールの仲良しラリーを見ていても面白さなんて感じない。しかし、全員が何らかの部活や委員会に属さなければならないらしく、このオリエンテーションはれっきとした授業扱いということになっている。こうした校則が時代遅れだ、廃止しようと生徒会がいうなら私は迷わずその人に投票するだろう。とはいえ、演目の最後に生徒会も出るらしいから期待はできなさそうだ。

「お待たせしました、男子アイドル同好会です」

 誰も待っていない。ざわざわした雰囲気がそれを物語っている。かくいう私も手持無沙汰でわら半紙のパンフレットをずっと眺めていた。同好会は部活動よりもネーミングにバリエーションがあるので、それからどんな活動内容なのか空想して時間をつぶしていたのだ。男子のアイドルを女子が研究するのか男子だけで女子アイドルを研究するのか。研究という名のオタク活動に従事するのか、昭和のアイドルから現在のグループに至るまでをガチ研究するのか。そもそもそれがどうしてオリエンテーションに参加するのか理解できなかった。

 すると唐突に大音量で音楽が流れる。きっと誰もが知ってるアイドルソングのイントロだ。びっくりして顔を上げたその時、舞台から一人の生徒が飛び出してきた。


フリフリの、可愛らしい衣装を着て。

そしてそのままセンターマイクで歌いだした。

声音は高いが男の人の声だった。


 そのインパクトで体育館は一気にその一人の男子生徒へと注目された。そしてあっけにとられていた。そのうち笑い声がして女性アイドルの格好をして歌うヤバい奴がいる、というざわついた空気になった。無論私も驚いていたが、その理由はほかの生徒達には該当しないだろう。


 それは舞台に立って踊っている男子生徒が幼馴染みの長我部龍牙おさかべりゅうがだったからである。

 

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