元レッドなんだがwwwwwwwww

きりんぱん

第1話 Aパート 俺たちの最終決戦

俺は赤崎竜太あかさきりゅうた。17歳の高校二年。成績ドベの、しがない帰宅部だけど、ひとつだけ秘密がある。


そう、俺は5人の戦士のリーダー

--『ギガレッド』なのだ。





………1ヶ月前………


永い戦いに、終止符が打たれようとしていた。

相棒である合体獣のロボたちと、それを操縦していたシルバーの力と引き換えに、俺たちはついに宿敵、暗黒神官デスメシアを倒し、命がけで滅びのカウントダウンを食い止めた。世界に死の雨をもたらすという装置を破壊したことで、奴の計画はついに失敗に終わった。ロボも、俺たちを支えるエンジニアも、みんなの力が一つになって掴んだ勝利だ。


ヒーロースーツは、もうとっくに戦えるような状態を超えていた。ボロボロの体に、ひび割れたメット。立っていられるのが不思議なくらいだ。でも、俺たちの顔には、ホッとした表情が浮かんでいた。青空が広がり、よどんだ雲の隙間から、街中を満たすように光が降り注ぎ始めた。戦いの中で共に戦い、傷ついたロボ達も、自らの傷を癒すため、光の柱を縫って天空のベースシティへと戻っていった。


世界を包んでいた毒の霧が晴れ、悲しみに満ちていた人々の顔に、笑顔が浮かび始めた。世界に、あたたかな希望の光が満ちていく……。




でも、戦いはそこで終わりじゃなかったんだ。




砕けたはずの、デスメシアの本体が、突然一つに動き始めた!

「こんなことで、我が野望を終わらせるものか……我が魂を喰らい、今こそ目覚めよ!!大地を滅ぼす最強の魔獣よ!!!」

突然、恐ろしいうなり声が響きわたり、あたり一面を震わせた。バラバラになったデスメシアが、融合した先は……。

「そんな!封印したはずなのに……!」

「こんなことが……!」

大地を割り姿を現したそいつは、俺たちを恐怖に叩き落とした、最凶最悪の敵……!



「大魔獣カタストロフ……!」



巨大な牙、血走った眼、鋭い爪。かつて、多くの犠牲を払いながら、やっとの事で封じたはずの、最凶最悪の魔獣。ロボの片腕を引き千切られた、あの時の苦い思い出が蘇る。恐怖におののく俺たちの前で、無情にも奴は暴れ出した。


復活した終焉の権化を前にして、誰1人、絶望に抗えるものはいなかった。

震えが走り、嫌な汗が滲み出す。誰よりも気丈なブラックでさえ、膝をつき、怯えるように奴の姿を眺めることしかできなかった。誰もが希望を失い、運命の無慈悲さに飲まれようとしていた。デスメシアが残酷な笑みを浮かべる。

「これで貴様達も終わりだ!!ギガレンジャー!!」




その時。

「……まだだ!」

「何?」

「まだ、諦める時じゃない……!」

俺は、痛みでいっぱいの体を奮い立たせながら、無意識に叫んでいた。

そうだ。絶望するのは今じゃない。この命果てるまで、何度だって這い上がってやる。食らいついてみせる。理由なんて、決まってる。


「この地球を救えるのは、今、俺たちだけなんだ!!!」

俺の中で、闘志の炎がもう一度燃え上がるのを感じる。

「人々を救うこの力がある限り、俺は、いや俺たちは、立ち止まってなんていられない。……負けるわけにはいかないんだああああ!!!」

声を張り上げながら、俺はもう一度立ち上がる。



祈るような俺の叫びが、絶望の淵にあったみんなの胸にも、届いてくれた。

「はっ……こんな馬鹿に、勇気付けられるなんてな」

気がつけば、俺のそばでブラックが立ち上がっていた。震える拳を握りしめて、恐怖に立ち向かおうとしている。グリーンも、ブルーも、ホワイトも、立つのがやっとのシルバーも。その体は恐怖に慄きながらも、瞳はまっすぐに宿敵を捉えている。もうその顔に、絶望は浮かんでいなかった。

みんな、戦おうとしている。



立ち上がる戦士たちに、屈するものなどない。地球の運命は、俺たちが変えてみせる。握りしめた覚悟を胸に、俺たちはありったけの声で叫んだ。

「デスメシア!!」

「人々の悲しみを生む」

「お前なんかに」

「絶対!!」

「この地球は」

「「「「「「渡さない!!!!!」」」」」」



そんな俺たちを嘲笑うように、デスメシアが歪んだ声でわめく。

「グハハハハハ……!!ほざけ!貴様らちっぽけな人間に何ができよう!!!」

カタストロフが唸り声を上げ、巨大な尾を振り上げて俺たちを吹き飛ばした。

まるで木の葉のように、打ち据えられた体が、宙に投げ飛ばされる。

「「「「「「うああああああっ!!!」」」」」」


地面に叩きつけられ、鈍い音が響く。途轍とてつもない痛みが全身を走り抜けた。身体はとっくに限界を迎えている。それでも、ボロボロの体でも、俺たちは何度だって立ち上がる。拳を握りしめて、俺は叩きつけるように叫んだ。

「ちっぽけなんかじゃねえ!!みんなの思いが一つになれば、力は!!無限なんだァァァァ!!!」



その時、左手にまとった変身ブレスに、光が宿った!

「「「「「「うおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」」

「な、なんだこの光は……!」

突如溢れた眩い光に、魔獣と合体したデスメシアが怯む。

立ち上がるみんなが、暖かな黄金の光に包まれていった。

「ギガチェンジャーが輝いてる……!」

「感じるぜ、地球の力を」

「俺たちが背負う」

「人々の希望を」

「みんなが、俺たちに力を貸してくれてる」

力が、満ち溢れて来る。




「「「「「「アクセス!ギガチェンジ!!!」」」」」」




眩ゆい光の中で、壊れたはずのヒーロースーツが、再び俺たちを包む--!

そのスーツは美しく輝き、纏った俺たちを強くする。漲る力が、みんなを奮い立たせる。溢れる勇気が、止まらない。今こそ、ギガレンジャー完全復活の時だ!

「炎の勇者!ギガレッド!!」

「闇の覇者!ギガブラック!!」

「海の賢者!ギガブルー!!」

「大地の忍者!ギガグリーン!!」

「天空の聖者!ギガホワイト!!」

「銀河の冒険者!ギガシルバー!!」



ギガチェンジャーに呼びかけ、ロボたちを招来するアクセスコードを叫ぶ!

「コード997《ナイン・ナイン・セブン》!サモン!ギガキング!!!」

俺たちの呼びかけに、傷ついたロボ達も応えてくれた! 天空から駆けつけるその傷だらけの体には、空から降り注ぐ金色の光が宿り、今新たな姿を現わす。変形し、合体していく姿は、いつものギガキングとは全く違う。

漆黒の躯体、灼熱の刃、そして背には黄金の翼--その名は。



「ギガスピリット……!」



黒と金の荘厳なる姿。破滅に立ち向かう救世主が今、顕現する!雄々しき金色の翼をひるがえして、真っ赤に燃え盛る剣を真っ直ぐカタストロフへと向ける。

その姿に、耳を塞ぐほどの絶叫を轟かせる大魔獣。一体化したデスメシアが、不敵に宣言する。

「何度抗おうと無意味!!!もう一度、貴様達に絶望をくれてやる!!!」

口を大きく裂いて、カタストロフが破壊弾を放つ!まっすぐに襲いかかるそれを、ギガスピリットが真っ二つに斬り裂いた!!


「俺たちは、もう二度と絶望なんてしない!!!」

「覚悟しやがれ!デスメシア!!!」

俺たちと、相棒のロボたち、そして地球のみんなの思いが一つになったこのギガスピリットに、撃ち砕けないものはない! 咆哮するカタストロフへ、俺たちは一直線に走り出す!!

「「「「「「うおおおおおおっっっ!!!!」」」」」」



ガキイィィィィン!

カタストロフの鋭い爪と、剣が交わる!互いに一歩も引かず、力と力がぶつかり合う。不意に魔獣が、クロスした爪をはね上げた!剣を持った腕が上に逸らされ、ロボの前面がガラ空きになってしまう。そこへ、振り上げられたカタストロフの爪が襲いかかる!


「させるか!!!!」

その爪を鷲掴み、自分たちに引き寄せる。暴れてもがくカタストロフ!

ギガスピリットが、握りしめた剣首を振り下ろして魔獣の爪を砕いた!!!

悲鳴をあげるカタストロフが、よろよろと下がる。



「くっ……ならばこれを食らうがいい!!!!」

デスメシアが、魔獣の口から、炎と闇エネルギーの混じり合う死の光線を吐き出させる!俺たちは翼を翻し、天へと高く飛び立った。鮮やかに空高く舞うギガスピリット!華麗に空を裂くそのロボを追うように、カタストロフの魔弾光線が牙を剥く! 的確に軌道を捉えられ、死の光線が襲いかかってくる!


瞬時に剣を捌き、一撃必殺の光線を正面から受けとめながら、ギガスピリットはまっすぐに魔獣めがけて飛翔した!!パワーとパワーのバトル!

少しずつ、でも確実に魔獣との距離を詰めていく。限界、いやそれ以上の力を引き出して、ギガスピリットがカタストロフに迫る!!


ついにその眼前に届き、デスメシアの体ごと、光線を吐き出す魔獣の顔面を引き裂いた!!!

「ぬわああああああああっ!!!!」

金切り声をあげて、よろめくカタストロフ!

ようやく奴に与えられたこの一手、このチャンスを逃すわけには行かない!





今、みんなのパワーが一つになる。ギガスピリットを伝わって、みんなの体と心がシンクロするのが感じられる。一体となった力が、ギガスピリットに溢れ出す! もう俺たちは一つなんだ。その思いを胸に、ありったけの声で叫ぶ!

「「「「「「決めるぜ!

スピリット・ファイナルギガ・バースト!!!!!」」」」」」



漲るパワーが、ギガスピリットの躯幹くかんいっぱいから放たれる光線となり、カタストロフを跡形もなく覆い尽くす!! 焼けるように、魔獣が塵になっていく! 咆哮しながら崩壊するカタストロフの中で、デスメシアが最期の絶叫をあげた。

「ぐあああああああ!!!!おのれ……ギガレンジャーァァァァァァァ!!!!!!」



噴煙を巻き上げながら、デスメシアと共に爆発四散した魔獣カタストロフを背に、街を見下ろしたギガスピリットは、ゆっくりと剣を下ろす。

沈み始めた太陽が美しく、勇者たちを照らしていた。






----


「終わったね」

「ああ」

広がる空に、夕焼けが眩しい。涼しい風が、ほてった頬を優しくなでていく。

街に、希望の光が差し込んでいった。


「あーあ、一時はどうなるかと思ったぜ」

コックピットから出てきたグリーンが、体を投げ出して地面に寝転ぶ。さっきまであんな死闘を繰り広げていたと思えないほど、みんなに笑みがこぼれていた。夕日の光が、優しく俺たちを包み込む。街が、赤く赤く染まっていた。


見上げてみれば、ギガスピリットもまた、俺たちと同じ風景を眺めているようだった。柔らかな風の中で、美しく輝く街の風景を、俺たちは胸に焼き付けていた。そんな中、ひとり壊れたギガチェンジャーを眺めて、ポツリとブラックが呟いた。

「……これでみんなともさよなら、か……」

みんなの中に、気まずい沈黙が流れる。定められた、別れの日はもうすぐそこだった。でも、俺は笑って言う。

「別れだけじゃないさ、俺たちは。ここからスタートするんだ」

ハッとしたように顔をあげたブラックの目は、うっすらと潤んでいた。

「レッド……」

「だから、さみしいけど、これは別れじゃない。きっとまた会える」

切なげにはにかんで、隠すように目をこすったブラックは、ほんの少しだけ赤くなった耳の向こうで、照れ臭そうに笑った。

「……ああ」

それに続くように、みんなも力強く頷いた。

「うんっ!」

「へへっ」

「そうだな」

「おう」

気がつけば、みんな最高の笑顔を浮かべていた。


左腕で、壊れたギガチェンジャーが誇らしげに輝く。

その手の拳を一つに合わせて、俺たちは誓った。

「またいつか、この場所で会おう」





………そして、今………


俺は、ギガレンジャーとして活動していた頃の高校を離れることになった。

まあ、もともと転勤の多い家庭だったから、仕方ない……って感じかな。


転校するのは俺だけじゃない。ブラックは、ギガレンジャーを支えてくれたエンジニアの誘いで、工学研究のため海外留学に旅だっていった。学校に残ったホワイト、ブルー、グリーンのみんなも、それぞれの夢を叶えるため、受験勉強に励み始めた。デスメシアとの戦いで、力を失ったシルバーは、しばらくみんなの元に残るらしい。


それぞれが、今度は自分の未来を掴むため、歩き出そうとしている。


辛いことも、悲しいことも、みんながいたから乗り越えられた。1人じゃなかったから、諦めない心を知った。きっとこの先も、この絆が俺の力になってくれる。この心に残る、熱く優しい絆が。


新しい街へと向かう電車の中、みんなが餞別せんべつにとくれた集合写真が、涙で霞んで見えた。

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