第78話 覚醒-03
「なぁ・・・キット。」
「はい、何でしょう?」
「スメラに・・・来た時・・・も・・・叩きつけ・・・られたな。」
「そうでしたね。ただ、今回の方がダメージが大きいです。」
「あぁ・・・身体が痺れて・・・視界も・・かすんで・・・る。」
「致命傷ではありません。暫くすれば動けるようになります。装備も20mmミサイルは制御部が損傷しましたが、それ以外は使用可能です。」
「制御を・・・渡す・・・奴が・・・主砲を向けたら・・・撃ってくれ・・・リミッターカットだ・・・壊れても・・・構わん・・・」
「了解しました。踏みつぶしに来たらどうしましょう?」
「祭詞でも・・・唱えてくれ。雅楽付き・・で・・・な・・・」
「了解しました。」
ドオーーーン!
轟音が響き、続いて大量の石礫が降り注いだ。
「何が・・・おきた・・・」
「おそらく多脚重戦車の蹴り上げた岩が直撃して、蒼雷が破壊されたと思われます。」
「くそ・・・」
蒼雷を多脚重戦車の上面装甲中央に固定させたのは最後の切り札にする為だった。
コード2887とは、俺が死ぬと同時に蒼雷に搭載しているMETを自爆させる為のものだ。
こんな事なら、取り付いた瞬間に即時自爆コードを送れば良かったのだが、命惜しさに判断を誤ったようだ。
キットに”特務隊の頃から随分と変わった”と言われたが、悪い意味でもその通りだったらしい。
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多脚重戦車は向きを変え、主砲を俺に向けた。
キットも装甲機動戦闘服を直接制御して特務改を構える。
ガシャン!
「コウ、主砲が装甲に覆われました。」
「構わん・・・撃ち抜け・・・」
「了解しました。」
リミッターカットした特務改が主砲の装甲を削っていく。
特務改はキューさんの最高傑作だ。
滅多な事では壊れない。
しかし限界はある。
そして、遂にその限界を迎えた。
「ふぅ・・・何とか少しは動けるようになってきた。」
「コウ、残念なお報せです。」
「大体分かるが何だ?」
「特務改が壊れました。」
「まっ、しょうがない。奴の主砲なら苦しまずに死ねるだろ。祭詞と雅楽を頼む。」
「了解しました。」
再び多脚重戦車の主砲を覆う装甲が格納され、照準を合わせて来た。
死を覚悟した時、突如として視界が銀色に包まれた。
「これは黄泉の国・・・じゃないな。」
「恐らくアンチレーザー煙幕です。」
何かが目の前に立ち塞がった。
「コウ、大丈夫?」
「フジさん?」
その瞬間、多脚重戦車の主砲が発射された。
しかし、フジさんの構えるタワーシールドで何とか防げているようだ。
「フジさん、無茶だ。逃げてくれ。」
「機械軍の残党狩りはわたしの任務だよ。」
「小型機までしか対応できないんだろ!無茶するな!」
「今さら逃げても背中から撃たれるだけよ。」
「くっ・・・」
「でも、まぁ、コウの言う通りそろそろ限界かな・・・」
その直後、何かが爆発した。
仕留めたと判断したのか、多脚重戦車の主砲は沈黙した。
やがてアンチレーザー煙幕が薄れ始めると、大穴の開いたタワーシールド、そして破壊された胸部装甲から煙を吹き出すATが目に映った。
「フジさんっ!!!嘘・・・だろ?」
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