第88話 いざ救出へ
しばらくするとマリィさんが戻ってきた。
だが一人ではなく、先ほどの男を伴って戻ってきた。
「マスターは相変わらず不在でしたが、皆さんに体力回復薬を使い、ギルドで休んでいただいています。それからこの方は、領主救出の為の建物内の案内をしてくださるそうです」
「私は隣に領地を構えるエマエンド男爵と申します。このまま皆さんに救出のお願いすることも可能かとは思いますが、それでは仮にも武に秀でた先祖から受け継いだ家名に傷をつけることとなります。ぜひとも救出までのお手伝いをさせていただきたいと思います。少なくとも私はこの屋敷の造りも知っておりますし、領主メルヘング伯爵様やその他の方々が幽閉されている部屋も存じ上げています。何より魔法のアイテムの在りかも知っております」
「その洗脳に使ったって言う魔法の道具がそのままここに置いてあるのか??」
相手が隣の領主で爵位がある人だとわかっても口調を変えないデッカーさん。
でも、このエマエンド男爵という方は偉ぶった感じもしなくて、僕のイメージでいう『貴族』って感じはしなくて、とても印象がいい。
誠意をもってデッカーさんの問いに答えているのが横で見ていた僕にもよくわかった。
「洗脳に使われたそのアイテムは一定の範囲内でしか効果が無いようなのです。どのくらいの範囲かはわかりませんが、あまり広い範囲ではないようです。目的を達成するまで関係者をここに幽閉しておきたいと言う考えがあるようで、幽閉している方々のすぐ近くに置いてあるようです。」
「領主を幽閉してまで達成したいと言うその目的とは?」
「そこまでは私も……ただ、国王様がこの地にご視察に来られる際に何かを起こす計画であるようです……領主救出も大事ですが、そちらの計画も阻止せねばなりません」
「うーん、なんか話がでかくなってきたな……元々はマリィの昔の仲間に声かけるってだけだったのにな」
「申し訳ないです……」
「いや、お兄さん……いや、輝君が謝る必要なんかないさ。逆にさ、お陰でこの人達を地下牢から助け出すことが出来たし、これから幽閉されてる領主達だって救出のチャンスがある。それに、これから起こるかも知れなかった国王を巻き込んだ事件を未然に防ぐこともできるかもしれない。君はこの件に係わる人達にとっての救世主と言っても過言ではないさ」
「二人とも、時間があまり残されていません。男爵に案内してもらって領主の幽閉場所に急ぎましょう。その後に他の貴族達を救出し、ついでに魔法のアイテムを破壊しましょう!」
「それではこちらへ!」
僕らは防毒マスクをつけ直すと、エマエンド男爵の後ろに続いて階段をかけ上がった。
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