第41話 旅が終わったら。

「とりあえず龍之介さん達の荷物持ってきたよ」


アジトに帰り、龍之介さん達の荷物をノマドさんに渡した。


「すみません、私が取りに行けば良かったものを…」

「いや、ノマドさんは地図の件で忙しいだろうし、僕が一番暇なんだから」

申し訳なさそうにするノマドさんにおどけて応える。

「それに、久しぶりにあの家に行けたから良かったよ」


そこでノマドさんに疑問に思ったことを聞いてみた。

「ところで、祖父の家と彼方の世を繋ぎっぱなしにしていたと聞いたけど、どこの鍵に繋いでいたの?玄関の鍵以外に鍵穴があるドアとか無かったみたいだけど…」


「その事ですが、繋ぎっぱなしにしていた扉は、輝様の自室とこのアジトを繋いでいる、悪徳商人が隠し扉にしていた額縁でございます」


「そうなんだ。それなら理解できたよ。祖父の家は昔ながらの家だから、玄関以外は鍵で開けるドアが無かったみたいだから…。どこかに隠し扉でもあるのかな、と思ったんだ」


「隠し扉ですか…流石にあの家にはないと思われますよ。…ですが、光一郎さまは茶目っ気がありましたからな。なにか仕掛けはあるやも知れませんよ」

ノマドさんは笑いながら愉しそうに話してくれた。


「あの家は光一郎様が内装を仕上げましたから…」

「え?大工さんじゃなくて?」

「光一郎様が設計をして、大工が大部分を作りましたが、内装はすべて光一郎様が行いました。器用な方でしたから……」


そうなのか…凄いな、じいちゃん。


「少なくとも私もいくつか仕掛けを作るお手伝いをしました。私も当時はずっと現世に居たわけではございませんので、きっと私も知らない仕掛けもあるでしょう。今度落ち着いたら光一郎様が作った仕掛けを探してみるのも一興ではないでしょうか。そういう楽しみ方を輝様がやってくれるとしたら、光一郎様もきっとお喜びになるでしょう」


「そっか~。楽しみだなぁ。東の魔女に龍之介さんたちを治療してもらったら、じいちゃんが遺してくれたものを探してみるよ。…って言うか、ノマドさんも一緒に探そうよ!」


「そうですな。私もその時は一緒に楽しませていただきますかな」

ノマドさんが嬉しそうに笑う。


「じいちゃんもきっとその方が喜んでくれるよ」


「確かに。遊び心のある方でしたから…」



最後は少ししんみりしたけど、なんか楽しいことを考えるって、最近は僕もノマドさんも少なかったから良かったと思う。


もし、これもじいちゃんの計算通りだったとしたら…って考え過ぎか。


多分仕掛けを作っていたじいちゃん本人が楽しんでいたのだと思う。


そんなじいちゃんだったから、僕もノマドさんも大好きになったんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る