第21話「足利 義栄」20(全192回)

『戦国時代の群像』「足利 義栄」20(全192回)

「足利 義栄」(1538~1568)戦国時代の室町幕府第14代将軍(在職:永禄11年(1568年)2月 - 9月)。天文7年(1538)、足利将軍家の一族で元堺公方・足利義維(平島公方)の長男として阿波国平島荘で生まれる(生年には天文9年(1540)説もある)。初名として、義親(よしちか)、または7代将軍と同名の義勝(よしかつ)が伝わる。永禄8年(1565)、永禄の変で従兄の13代将軍・義輝が三好三人衆・松永久秀に殺害されると、三好三人衆や久秀らによって、中風で将軍の任に堪えられないであろうとされた父・義冬(義維)の代わりに、将軍候補として擁立された。しかし同年11月から三人衆と久秀が権力抗争を開始すると、義親は12月に三人衆に強要されて久秀討伐令を出すことを余儀なくされた。翌永禄9年(1566年)6月、三人衆方の篠原長房・三好康長らに擁されて淡路国に渡海、9月23日には摂津越水城に入城した。そして冬の12月5日には摂津国富田の総持寺に、7日には普門寺に入った。さらに24日には従五位下左馬頭に任官許可が出され、翌永禄10年(1567)1月5日に正式に叙任され、それと同じくして、名を義栄と改名した。11月、朝廷に対して将軍宣下を申請したが、朝廷の要求した献金に応じられなかったために拒絶された。翌永禄11年(1568)2月8日、三人衆の推挙により朝廷から第14代将軍として将軍宣下がなされ、将軍に就任した。しかし、三人衆と久秀の抗争が止まず、義栄自身が背中に腫物を患っていたため将軍に就任しても入京することは無かった。永禄11年(1568)9月、義輝の次弟・足利義昭を織田信長が擁立して上洛してきたため、三人衆は畿内で信長に抗戦したが、敗れて畿内の勢力を失ったため阿波に逃れた。久秀は信長に臣従、障害がなくなった義昭は15代将軍に就任した。阿波国から摂津国に入った義栄の下には、堺公方を称した父の義冬やその養父であった10代将軍・足利義稙に仕えた幕臣やその子孫が家臣として仕えていたが、義冬・義栄の2代の御内書に付属された副状の発給者となっている畠山維広などその数は限られておりその基盤は脆弱なものであったし、当時、義冬は中風のため隠居しており、発言力は皆無に等しいと言え(足利義視が足利義材の大御所として権勢を揮ったと言うようなこともしていない)、そのため、義輝に仕えていた幕臣の取り込みを図った。当時の在京の幕臣の所領の多くは三好氏の勢力圏にあった京都周辺に集中しており、所領の安堵と引換に義栄の下に置こうとしたのである。この動きに応じたのは大舘輝光や伊勢貞助・小笠原稙盛・秀清父子であった。また、永禄の変の直前に義輝に叛旗を翻したとして討たれた政所頭人(執事)・伊勢貞孝の孫である伊勢虎福丸(後の伊勢貞為)の帰参を許して、伊勢氏宗家の再興を認めている。更に三好三人衆の一人であった三好長逸を御供衆に抜擢している。一方で伊勢貞孝の後任の頭人であった摂津晴門や政所の実務を担当した奉行衆の多くが義輝を殺害した三好三人衆が推す義栄を嫌って、越前国にいる義昭と通じて一部は下向したまま戻る事は無かった。 当時の室町幕府の幕臣は武家故実をもって仕える層と相論の裁許や行政事務をもって仕える層(奉行衆)が存在していたが、義栄は伊勢氏や大舘氏など前者の層を取り込むことには成功したものの、諏方氏や飯尾氏、松田氏など後者の層の取り込みは一部しか成功せず、将軍就任後の幕府機構の再建に不安を残す形となった。それでも、父・義冬の時とは違って対抗者である現職の将軍が不在であった(前将軍の実弟である義昭の方が優位ではあったものの、あくまでも義栄と同じ「将軍候補」に過ぎずかつ上洛の目途が立たなかったことに加え、当時僧籍にあった。)ことが義栄の将軍宣下に有利に働いたとみられている[14]。その直後、以前から患っていた腫物が悪化して病死した。享年29(または享年31)。また死去した場所も阿波国のほかに淡路国、摂津国の普門寺など諸説ある。 義輝とは仲が悪かったという。室町幕府歴代将軍の中で唯一、本拠地のある京都に一度も足を踏み入れずに終わっている。日本史上本拠地に入ること無く終わった将軍は、義栄と徳川慶喜(大坂城で将軍に就任し、大政奉還で職を解かれた後に江戸城に入った)の2人しかいない。




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