刻を廻る星鋼ガトラベル
東雲メメ
PART.1:WHALE OF FORTUNE
#--『それは、何度目かのエピローグ』
『諦めろ、
装填されていた
次の瞬間──根元まで突き刺さっていた杭が引き抜かれるのと同時に、機械仕掛けの巨人は膝から崩れ落ちた。
廃墟と化した
ヒトと同じように四肢を有しながらも、ヒトが持たざる尻尾を臀部から生やしている。そんな“獣人型”ともいうべき全高約7メートルの
『これで
相対する巨人の片側──白色をした五体満足の機体がそう言った。
声は少年のものだった。まだ若干の幼さが残る……しかし芯の強さを感じさせるような落ち着いた声音で、通信回線越しに警告を促してくる。
「ここが
『? 何を
白い機体が見下ろす視線の先──そこには今しがたトドメを刺されたばかりの、胴体に大穴を空けている黒い巨人が
すでに少年によって牙を折られたその
自信と執念に満ちた、どこまでも
「オレにはまだ
『減らず口を……そちらの武装はすべて破壊させてもらった。どう考えたって完全に“詰んでる”よ』
事実、男の機体は持ちうるすべての得物を取り上げられており、またそれを行使するための両腕もすでに切り落とされてしまっている。
人型兵器としての長所を剥奪された黒い機体は、もはやボロボロの胴体に脚が生えただけの
「フッ……読み違えているぞ。オレはすでにジョーカーを切っている」
『何……?』
そんな絶望的な状況にあってもなお、男は操縦桿を握るその手を決して緩めてはいなかった。
“希望”と呼ぶにはあまりにも
そこで白い機体を駆る少年はようやく気付いた。
まるで二台の冷蔵庫を背負っているように、人型から大きく逸脱した両肩部。その上面を覆っていた分厚い
先ほどまで激しい攻防戦を繰り広げていた、その合間に──時間を超えた量子暗号通信を行っていたことの、確かな痕跡だった。
『まさか……
「ああ。そして貴様に真の敗北を
どこか投げやりな笑みを浮かべながら、男は手元のコンソールにあるコマンドを打ち込んでいく。
システム側でそれが受諾されたのを確認すると、腹を括った男は覚悟を決めてペダルを蹴り込んだ。
地面に這いつくばる死にかけのセミが、まるで最後の力を振り絞るかのように──男の駆る機体はとつぜん跳躍し、不意を突く形で少年の白い機体へと体当たりする。
そして地面に押し倒されながらも必死に抵抗する敵機をどうにか抑えつけつつ、男は躊躇いなく“最終意思確認”のスイッチへと手を伸ばした。
『まさか、自爆するつもりか……!? 無駄だ。その機体に積載された火薬量では、次元歪曲場の
「クク、諦めんぞ……
『くッ、正気を失ったか……!』
「オレと刃を交わす前の自分に伝えておけ、せいぜい首を洗って待っていろとな。ククク……クフハハハハハハハハハッ!!」
させるものか──と少年が叫び返したときには、すでに極彩色の輝きを放つ粒子は爆発的に広がり始めていた。
男の意識が/肉体が遠のいていく。
その間にも黒い機体から放出されている粒子は、なおもその範囲を拡大させていき──
(たとえ何度繰り返そうとも、今度こそオレが必ず救い出してみせる……)
凄まじい衝撃が機体の心臓部で発生し、男の肉体や意識を、周りの大地もろとも吹き飛ばしていく。
そして全てを包み込むまばゆい光は、やがて一筋の光条へと集束し──
(だから、
時計の針は、また巻き戻りはじめた。
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