058_狂人

裏切って、また裏切って、またまた裏切って


そうして手に掴んだものが手放せない


手放して、また手放して、またまた手放して


そうして手に染み込んだものが落とせない




皆はその手を見て狂人と謳う


狂人の行きつく先はどこか


闇だ



暗闇に放り出されて叫ぶ


ありったけの言葉を叫ぶ


届かぬと知ってなお叫ぶ



やがて弱りきったところで聞こえてくる声


声を頼りに力を振り絞り手を伸ばす



やがては全身が狂人に染まる


狂人として死んでいく

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