もっとも評価難しき人、全てのAV女優に感謝しな!

 この職業ほど人の役に立ち、敬遠される仕事も無いだろう。

 

 私はよくAVを見ることがある。  そう、私はAVが好きなのだ。 

 

 しかし女優物は見ない。 もっぱら素人ものだ。

 

 面接、ナンパ、カーセックス、なんならミラー号を全シリーズ読破してみようかという覚悟さえある。 


 つい三日前に見たパコパコバスツアーシリーズなど、あと十年若かったら参加してみようかとも思えるほどに高揚した(主に下部がね)


 もう一度言おう! 私はAVが好きだ。

 

 毎月5のつく日にDVDを借りに行くことが私の日課であり、くだらない日常ともてあます性欲を発散する為には必要なことだ。


 …………(沈黙) 

 

 ああ、勘違いしないでおくれ……世界の男の過半数以上がわかりきっていることを書くだけでこれを終わらす気はないよ。

 

 どこかかから聞こえてくるBITCH五文字。 

 

 そう、誰もがお世話になりながら、あるいは夢中になりながらもこの問いかけには簡単には返事が出来ない。


『現、元AV女優を彼女として一生の伴侶として愛せるのか?』

 こんなことを書いている私でさえ、この問いに即答することはできない。

 

 もちろん嘘をつけば、深く考えなければ、あるいは自分自身が『世間的にはもっと険悪すべき存在ならば』簡単に『愛している』といえるだろう。

  

 しかしそれは本当の意味で愛していると言い切れるのか? 

 

 果たして本当に自分達は不幸や不和に陥ったときに、彼女らの過去を口にはもちろん心の中でさえ罵倒せずにいられるだろうか?

 

 この問いに対する答えを未だ私は持っていない。

 

 所詮は画面の向こうで、他人とのセックスで、性欲を発散するのが目的で見ている傍観者である私がこのようなことを考えること自体がおこがましいのかもしれない。


 だが次に記述する偽らざる本音を考えればあえてこの『おこがましいあるいは余計なお世話』を最初に書かねば誠意が無いのではないかと愚考したのだ。

 

 そう、現役、元問わず全てのAV女優達が幸せにならんことを。

 

 最初に書いたように、彼女らの作品によって私は救われている。 もちろんそれは下世話な意味でも。 

 

 その程度の関係性でしかない私が彼女達の人柄が素晴らしいとか、きっと良い子に違いないとかあれこれ想像することは実はぞっとするほどに無神経なのではないかと思えてしょうがないのだ。


 そしてそれはBITCHあるいは昔風にあえて悪く言えば売女なのだから悪い人間に違いないというベクトルが違うだけで同じ偏見と変わらないと思う。


 私は彼女達個々の人格によってそう思えるのではなく、AV女優という職業とそれを生業とする人達に最大限の敬意と感謝を示しているのだ。


 だがときに画面に魅入りながら、リビドー(性欲衝動)に酔いしれているときにふと彼女達の手首や疲れた瞳に心を奪われる。  


 もしかしたらこの想像こそが彼女達への最大の侮辱なのではないかと恐怖し、

赤面してしまいそうになるが、一人の男子として彼女達が幸せになってもらいたいと本気で思っているのだ。


 何故なら私、私以外の男達は彼女達のおかげで性欲を発散し、おろかなスケベ心による過ちを未然に防いでもらっているのだから。


 なので彼女らに最大限の気遣いとお金を……。


 どうか彼女達がその過去のことで必要以上に後悔することが無く幸せな生涯を送ることを一人の男として切に願う。

  

 なぜなら彼女らに世話になっていない男などまずいないはず……ならば恩人の幸せを祈ることのできないような人間が一体何を成し遂げることができるだろうか?


 このある意味余計なお世話を、あえて恥ずかしげも無く言えるほどに私はAVが好きなのだ。


 そして全ての男たちもまた私と同じようにAVが好きなのだ。 


 それこそが男であるからこそ……。

 

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