君のいた日々①
私は零の隣に並んで歩いた。
この道は、去年まで私たちが通っていた小学校へ続く、元通学路だ。
以前は毎日のように零と並んで通学していた。雨の日も、風の日も、雪の日も、暑い日も。そういえば、三年生だか四年生だかの時、
まだほんの数年前のことなのに、なぜか遠い昔のことのように感じられて、少し
しばらくすると、
一応ここは、私と零が初めて出会った場所ということになる。零は一年生のゴールデンウィーク明けに、私のいたクラスに転校してきたのだ。
………
……
…
「はい、みなさん、席に着いてください。今日はこのクラスに新しいお友達が来ました。さあ、
先生の言葉に、クラス中がどよめく。ガラガラっと音を立てて、木製のスライドドアが開き、硬い表情の男の子が入ってきた。そのまま
「じゃあ、みんなに自己紹介してください」
先生は男の子を
「はい……」
ボソッと小さな声で返事をして、男の子は自己紹介を始めた。
「
どこか不安そうな声で、日野君は言った。
パチパチという拍手の音と、「よろしくなぁ!」というお調子者男子たちの声が教室に響く。日野君の硬い表情が、少しだけ柔らかくなったように見えた。
「日野君の席は、
えっ⁉︎ 私の⁉︎
先生が日野君を、私の隣の席まで連れて来た。
「お家がお隣みたいだから、仲良くしてあげてね」
「えぇっ⁉︎ 隣⁉︎」
そういえば、一昨日お母さんが「お隣、引っ越してきたみたいよ。
日野君は私の方をチラッと見て、目が合うとすぐに目をそらしてしまった。それでも「よろしく」と私に言って席についた。
私も「よろしく」と返して、すぐに目を伏せた。ちょっと緊張しているように見えるけど、他の男子とは違って、ちょっと陰のある大人っぽい雰囲気の日野君に、私は少し照れてしまったのだ。
………
……
…
これが、私と零の出会いだ。この日、零と私は初めて一緒に下校し、道中いろんなことを話そうとして、話せなかったのを未だに覚えている。私たちはそれぞれ人見知りを発動して、うまく会話が続けられなかった。でも、お互いに悪い印象を持たなかったから、それからは毎日のように私が声をかけ、一緒に登下校した。そのうちにちゃんと喋れるようになり、お互いの家を行き来するような関係になった。私は、だんだんと零のことを好きになっていった。
零はどう思っていたんだろう。私のやることに散々付き合ってくれていたけど、私のことを好きでいてくれたのだろうか。
隣の零に聞いてみようと思ったけど、私の声は届かないことを思い出してやめた。
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