　これはよくできたファンタジー！

　魔王の城に幽閉された姫が求めるのは、「安眠」。

　快適な寝床を探すため、魔王城をうろつく。

　ときには死亡して教会で復活する。

　魔王でさえ、姫を持て余している始末だ。

　で、勇者は姫に好意を持っているが、姫からは煙たがられている。

　これは、すごくよくできたファンタジー作品である。

　魔物の特徴、魔王城の構造、マジックアイテムなどが、「安眠のため」に消費される。

　最強クラスの魔物さえ、快適な眠りのために処理されてしまう。

　幹部クラスからこっぴどく怒られても、眠りの誘惑には逆らわない。

　あるのは、気持ちよく眠りたい煩悩だけ。

　全身タイヤのゴーレムなる、ギリギリを攻めるギャグも最高だ。

　姫が惰眠をむさぼるだけで、20巻まで引っ張るというヤバさ。

　しかも、この手のギャグ系は一歩間違うとムダシリアスな話になるのだが、まるでそんな展開にはならない。

　アニメも全12話だが、いい話になることもあまりなく、すべては姫が眠るための布石。

　ここまで突き抜けたファンタジーを、俺は知らない。

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